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アイスランド=噴火で思わぬ影響広がる=悲鳴あげる在京旅行社=空港に宿泊する日系人も=「まだ予断許さない」

ニッケイ新聞 2010年4月21日付け

 20日付けフォーリャ紙によればアイスランドの火山噴火で欧州経由の航空路線の45%が休航しており、欧州の航空ダイヤが9・11テロを上回る混乱に陥ったが、その思わぬ影響が日伯間の空の旅にも出ている。なかでも、日本政府の帰国支援金による、在日ブラジル人の駆け込み帰国者が集中する4~5月に影響を与える可能性があるようだ。また、南米路線存続が検討されている日本航空にも何らかの影響があることは必至の状況であり、まだまだ予断を許さない状況のようだ。

 開口一番、「影響がすごく出ています」と電話越しに深刻そうな声を伝えるのは、アルファインテル南米交流(東京)の岡誠治営業部長だ。
 20日からルフトハンザ航空が通常の運行をはじめるなど好転しつつあるが、「噴火が再活性化する可能性もあり、まだ余談を許さない状況」と緊迫した様子だ。
 3月5日に日本政府の帰国支援金申請が締め切られたため、申請者は5月末までに日本を出発しなければならない。今現在、駆け込み申請者の予約で航空便が埋まっている状態で、この噴火で先週末から運行キャンセルが相次ぎ、在京日系旅行社は対応に悲鳴をあげっぱなしだったようだ。
 岡営業部長は「この間に出発予定だったお客さんには事情を説明し、予約を先延べして入れ直し、再開するまで東京近郊の親戚や友人の家で待ってもらっている。中には、空港まで連れてきた人材派遣会社の人の自宅で待機している日系人のお客さんもいる」という。「これがもし、帰国支援金の帰国者がラッシュだった昨年ならどうなったことか・・・」。
 同営業部長は「成田国際空港にはブラジル人の姿はほとんどない。空港に寝泊まりする外国人で目立つのは、欧州に帰る観光客ですね」というが、読売新聞サイト20日付けには空港で待たされている、次のような日系人の声も掲載されている。「ブラジルに帰国するはずだった日系ブラジル人のタケウチ・フレデリックさん(36)は妻(34)、長男(6)とともに空港に寝泊まりして3日目。タケウチさんは『子供の健康が一番心配。ベッドで横になりたい』と疲れた表情で話した」とのこと。
 サンパウロ市内のある日系旅行社も「昨日まで、今日は飛ぶか、今日は飛ぶかと待っていた。20日からようやく運行が戻りはじめた」という。グアルーリョス空港には、日本行きを待って寝泊まりする客はおらず、混乱を避けて欧州経由から北米周りに乗り換える乗客がでているという。
 ただし、日本航空サンパウロ支店の小西弘恭(ひろやす)・南米地区総括支店長によれば、北米路線の直行便に関して「今のところ噴火の直接の影響は見られない」とのこと。現在は週2便に減便されており、かなり埋まっているという。
 ただし、欧州経由のTAMとの乗り継ぎ便(ロンドン、パリ、フランクフルト)には影響が出ており、出発を先延べするなどの対応をしている。
 現在、同本社では南米路線を含めすべての路線の見直しが検討されており、6月に会社更生計画を裁判所に提出するために、5月いっぱいを目処に立案中だ。すでに10月までの航空スケジュールが発表されており、それ以降の運行について、その検討過程で存続が決定される模様だ。
 同支店長は「一般論としては、この間の収入が入らないことで圧迫される状態になっている」とし、今回の噴火の影響は避けられない模様だ。
 同社の一般的なチケットに関しては払い戻しに応じているが、取り消し手数料はかかるという。