ニッケイ新聞 2010年4月27日付け
【既報関連】ブラジル社会党(PSB)がシロ・ゴメス下議の大統領選出馬差し止めの方向で動いている事で、ゴメス氏が23日、ルーラ大統領やPSBのあり方を痛烈に批判し、大統領選出馬がないなら、野(や)に下る可能性をも示唆したと24日付伯字紙が一斉に報じた。同氏の信頼が厚いペドロ・ブリット港湾局長の行方など、同氏の言行やその影響については引き続きメディアの注目材料のようだ。
「ルーラ大統領はマヨネーズの中を泳いでいる(現実離れした状態に居るの意)」―ゴメス氏自身は取材者との間での個人的な発言のつもりだったとする表現が報道機関で流されたのは23日。
大統領はジルマ氏はセーラ氏に楽勝との夢を見ているのであり、「落ち着け」といさめる人物もいない、次期大統領としてはセーラ氏の方が備えが出来ているといった発言が、大統領やPSB首脳らをいらだたせないはずはなかった。
労働者党(PT)候補のジウマ氏も、民主社会党(PSDB)候補のセーラ氏も良く知っているというゴメス氏は、人間的にはジウマ氏の方が好人物としつつも、「近い将来ブラジルを襲いうる経済問題などに対処する能力はセーラ氏の方が上」と評価した。
イタマル政権で財務相を務めた事があるゴメス氏は、2011年から12年にブラジルは為替問題などの経済問題に直面すると予想。その時、ジウマ氏は問題に押し潰される可能性が強いが、セーラ氏なら持ちこたえ得るというのだ。
また、自身の立候補差し止めに際し対話を避けたルーラ大統領や、弟のシディ・ゴメス・セアラ州知事に、ゴメス氏が大統領選に出るなら再選へのPT支援はないと交渉したジョゼ・ジルセウ氏にも不満を表明。
PSB党員が知事選に出る州でPTと連立を組む諸党の支援を得るための政治駆け引きの道具とされた事は、国の将来にとり憂うべき行動と言う同氏は、政治活動から遠ざかる可能性とジウマ氏支援拒否を表明。25日付エスタード紙などによると、弟の知事選と前妻のパトリシア・サボヤ上議の下議選、政治家として先鞭をつけてくれたPSDBタッソ・ジェレイサッチ上議再選支援に集中するつもりだ。
同氏からのジウマ氏支援を期待していたPT陣営では、同氏退陣で同氏支持票がセーラ氏に流れる事を憂慮するが、一部では、ルーラ政権での閣僚経験もある同氏の選挙人登録をサンパウロ州に移管した時点で、大統領選出馬の可能性は断たれていたとの見方もある。
同氏を巡る駆け引きでは、ジウマ、セーラ両氏が沈黙を守っているのに対し、元同僚で大統領選候補でもある緑の党のマリーナ・シウヴァ氏が、民主主義への冒涜と強い口調で批判する文をブログに掲載したという。