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政策金利年9.5%に引上げ=遅過ぎたインフレ対策?=年末は11・75%の予想も=低利の長期ローン減少か

ニッケイ新聞 2010年4月30日付け

 08年9月の引上げを最後に、09年1月以降切下げが続いていた政策金利(Selic)が、27、28日の通貨政策委員会(Copom)で年9・5%に引上げられたと29日付伯字紙が報じた。3月の会議でも4月からの引上げは必至とされていたが、引き上げ幅は、最近のインフレの動向から0・75ポイントとなった。

 メイレーレス中銀総裁の続投決定後初の会議では、前会議時のインフレ率0・39%が0・46%となり、12カ月間の累積指数は5・1%と報告。年間予想も3月の4・6%から5・2%に上方修正され、0・75ポイント引上げは全員一致で決まったという。
 前記の年間予想は中銀の算定値だが、他の調査機関の数字では、3月の4・99%が5・41%に上昇修正されており、年末には6%到達との見通しさえある。
 これらの数字はいずれも、今年の年間インフレ率が政府目標の4・5%を上回り、目標上限値の6・5%に達する可能性がある事を示唆。しかも、現時点で金利を引上げても今年のインフレを目標値に止める事は不可能で、金利調整は2011年のインフレ抑制のためとの声も出ている。
 政策金利引上げ効果は6~9カ月後に判明という常識からいけば次回引上げは効果確認後と考えたいが、市場関係者は、6、7、8月も0・75ポイントずつの引上げが行われ、11・75%に達すると見ている。
 所得向上や貸出し金利の低下と長期化で促進された消費過熱がインフレを煽る事は、以前から懸念されていたが、回復し始めた経済活動に水を差すのを恐れた政府が金利引上げを嫌うのも当然。前回の会議では大統領の要請に従った中銀総裁も、今回は金利引上げを避けえなかった。
 政策金利引上げは消費者ローンや企業融資などにも影響。2万5千レアルの車を60回払いで買う場合、金利引上げ前と引上げ後の利息差は653・40レアル。政策金利が11・75%になれば、差は2528レアルとの試算もあり、利息引上げや貸付期間短縮が起きる可能性は強い。
 専門家の間には、国内外の金利差を狙った国外からの直接投資などの増加でドル流入量が増え、レアル高が進む事を懸念する声もある。消費過熱で増えた輸入に拍車がかかり、輸出業者が更に苦しむ構図も描けるが、遅きに失した感のある金融引き締めのツケを、次期政権が負う事になるのは避けられないようだ。