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最高裁=特赦法見直し請求を棄却=軍政下の迫害に処罰なし=同法適用対象は全ての人=人権巡る新たな論議も?

ニッケイ新聞 2010年5月1日付け

 最高裁が4月29日、ブラジル弁護士会(OAB)が提出していた、1979年に制定された政治犯特赦法の見直し請求棄却を決めたと同30日付伯字紙が報じた。軍政時代に政治犯扱いされた人々の復権を目的とした同法が、迫害者も免罪対象となると理解される様になった事への不満の声は、同法は全ての人に適用の一言で拒絶された事になる。

 1964年から1985年の軍政時代には、軍政に賛同しない政治家や学生など、多くの人の迫害や殺害、亡命などが起きたが、これらの政治犯扱いされた人々の復権と市民社会復帰のために1979年に制定されたのが、見直し請求が出た特赦法(恩赦法)だ。
 同法制定後は、国外亡命者の帰国や投獄者の開放、遺族への賠償などが行われたが、本来は、迫害などを受けた人を対象としたはずの同法が、迫害した政治家や軍人、警官などにも適用された事が国内外で様々な疑問や論議も呼んでいた。
 OABによる同法の見直し請求は、法務省や人権局などが支援していた一方、連邦総弁護庁や国防省、外務省は反対の立場をとっていたもの。
 28日に始まった最高裁での審議は、エロス・グラウ判事が3時間に及ぶ報告書読み上げの後、反対票を投じた時点で中断。29日に他の8人の判事が票を投じたが、最終的には7対2で見直し請求棄却が決まった。
 軍政下の被迫害者の中にはルーラ大統領やジウマ元官房長官、亡命者の中にはカルドーゾ元大統領やセーラ元サンパウロ州知事などがおり、最初に見直し反対表明のグラウ判事も被迫害者の1人だ。
 同法制定後も、迫害で死亡した人の特定と遺族への賠償や、アラグアイア地方で死んだゲリラ達の遺骨収集など、多くの課題を抱えるブラジル。
 アルゼンチンでは4月20日、軍政時代最後の大統領に25年の実刑判決。他国でもピノチェト時代の虐殺関係者の裁判など、軍政時代の為政者らへの断罪も続く中、迫害や虐待は拒絶するが処罰しないというブラジルの姿勢に、人権団体や国際社会から迫害容認で時代逆行との声もある。
 今回の特赦法適用に関する見直し請求棄却については、迫害者らも既に時効適用の時期だから見直しは不要で全人への適用は適正との声と共に、タルソ・ジェンロ元法相や遺族らからの失意の声も上がっている。

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