ニッケイ新聞 2010年5月4日付け
1日の「労働者の日」の集会でも「君達は、私が大統領の席に据えたいのは誰か知っているはずだ」と訴えるなど、ジウマ氏支援のためなら何でもありのルーラ大統領が、少なくとも320万人を対象とする社会政策実施を急いでいると2日付エスタード紙が報じた。1日付フォーリャ紙には、第1四半期の公的機関の資金繰りは赤字状態と報じられた後だけに、実施に向けての資金不足も案じられ、得票狙いの政策提示の声も出ている様だ。
ルーラ大統領の前倒し選挙活動は今に始まった事ではない。サンパウロ市で行われたフォルサ・シンジカルなど主催の集会では、大統領が前記の様な発言を行って間接的にジウマ氏支援を要求。
同集会ではパウロ・ペレイラ・ダ・シウヴァ下議もセーラ氏を批判するなど、公団・公社の資金提供も受けた「労働者の日」の集会は、労働者党(PT)の選挙集会の様相を呈し、野党側も選挙法違反だと高等選挙裁判所へ訴え出る構えだ。
一方、選挙年に打ち出された現政権の大型社会政策は、PT現政権のイメージアップと共に、ジウマ氏のイメージアップや知名度向上のためとの見方が出てくるのもある意味で当然だ。
現政権最後の年に打ち出されたのは、生活扶助対象枠の拡大、非行対策としての15~17歳の青年向け社会教育プログラムや青少年向けのスポーツ普及、ミーニャ・カーザ、ミーニャ・ヴィダ(我が家、我が人生)計画の推進、通学用のスクールバスや舟の増便、留置所の増設など。
社会開発省他、教育、スポーツ、自治、法務各省にまたがる計画の中にはこの1年で78%など急激に対象者が増えたものもあり、「現政権の社会福祉政策は国民のために組まれたもので、将来へのモデルとなる」との大統領発言とは裏腹に、ジウマ氏売込みのためとの見方が強い。
現政権の看板である経済活性化計画(PAC)もだが、今回加速化を図ろうとする社会政策についての不安材料は、経済活動が活性化してきたと言ってもプライマリー収支黒字は第1四半期に落ち込み記録という中での財政的裏づけだ。
今年度の税収は回復しているが支出増に追いつかないとのフォーリャ紙の記述などから行けば、現政権最後の1年で負債はさらに拡大し、次期政権の台所事情を厳しいものとしそうだ。
生活扶助対象者の調査では、就学率向上や退学率減少は確認されたが、学習面の習熟度向上はわずかとの報告もあり、笛吹けど踊らずとなる事を懸念する声も出ている。