ニッケイ新聞 2010年5月5日付け
ブラジル地理統計院(IBGE)が4日、3月の工業生産が2月比で2・8%、前年同月比では19・7%伸び、第1四半期の前年同期比18・1%伸張とともに1991年以降最高を記録したと発表した。各紙サイトの報道によると、3月の工業生産は08年9月とはわずか0・1%の差で、業界関係者は、工業生産が金融危機以前の水準にほぼ回復した事と生産活動の加速化を表す好材料と歓迎している。
3月の工業生産を09年と比較した場合、4分の3にあたる76・7%の製品生産が拡大。分野別でも27分野中24分野で業績が向上した。
第1四半期の生産が18・1%拡大したのは、同期に38%の生産拡大を記録した自動車産業の回復に負うところが大きいが、その他にも、機械設備が42・1%、製鉄35・2%、化学製品25・6%、鉄鋼43%などが好調だ。
一方、生産減少を記録したのは、運輸機器11・3%、薬品9・7%、石油精製・アルコール生産9・4%。
前年同期比の成績が好結果を記録したのは、前年の工業生産が国際的な金融危機で大きく落ち込んだ後だった事も影響しているが、09年第4四半期比でも季節調整後の数値で3%の拡大で、前期比では4四半期連続の成績向上となる。
但し、工業生産の回復がそのまま工業界の雇用拡大に結びつくかというとそうは言えない。
4日付の伯字紙では、第1四半期の労働者数はルーラ政権初年にあたる03年と比べ18・4%拡大し、3400万人が新たに労働市場に加わったと報じたが、同期間中の工業部門の雇用増は10・5%のみで、サービス業の39・9%増と大きな開きがある。
これは、金融危機による生産活動停滞や後退で解雇された人達が別の部門に移った事や、工業部門の生産性向上で多くの人員を必要としなくなった事などが原因だ。
サービス業の雇用拡大は大都市圏で著しいが、国際的な金融危機の影響を大きく受けた工業に比べ、国内消費との結びつきが強く危機の影響を受けにくかったサービス業は、安定した状態を保ち増加を見たともいえる。
工業製品税(IPI)減税打切り後初となる4月の新車販売は、3月比21・4%減だが前年同月比18・5%増で、販売台数は4月としての新記録との4日付伯字紙報道からいけば、工業生産も前年比の数値だけで喜ばず、今後の動向を見極める必要がありそうだ。