ニッケイ新聞 2010年5月8日付け
【既報関連】密輸により昨年9月に逮捕された中国系マフィアの代表パウロ・リー氏(通称、53)と緊密な仲にあったことが発覚し、その違法行為にも加担していた可能性があるとして批判を浴びるロメウ・トゥーマ・ジュニオール法務省長官は、「交友関係があっただけ。私自身は何の不正行為も犯していない」と主張。ルーラ大統領は容疑を高める新事実が出てこない限り同長官を免職する意向はないことを明らかにした。6日付伯字紙が報じた。
携帯電話の密輸により逮捕されたリー氏の捜査線上で、同氏の電話の盗聴やメールの送受信記録から、親密な関係が明るみに出されたトゥーマ長官。連邦警察の調べによれば長官自身もリー氏から携帯電話やビデオゲーム、コンピュータを購入しており、リー氏を通し海賊版商品を取引した可能性が高い。今年4月から海賊版撲滅委員会の委員長を務めていたトゥーマ長官には多くの批判が集まる。
さらに、中国人への偽装ビザを作成していたリー氏の活動に加担していた疑いが取り沙汰されているほか、トゥーマ長官の補佐官が、彼の指示で税務署に不審な電話をかけるなど、リー氏が関わる商品の取引を手伝わされていたとの推測も挙がってきた。
6日付伯字紙では、トゥーマ一家は30年もの間リー氏と家族ぐるみの交流があり、父親ロメウ・トゥーマ上院議員の選挙など、リー氏が一家の選挙活動を支援していた事実も報じられた。
それに対し、ブラジリアで行われた合同記者会見で、トゥーマ長官は「リー氏の逮捕には心底驚いている」とコメントし、「友人だからといって、相手の行動を全て把握しているわけではない。同氏の不正行為に関しては何も知らなかった」と強調。
リー氏の押収品から見つかった名刺には、トゥーマ長官の特別補佐と記されていたが、同長官は、法務省長官の補佐として働いていた事実はなく、03~06年の州議員だった時期に補佐を任せていたと述べた。海賊版商品の購入についても否定している。
こういった騒動に対しルーラ大統領は、ルイス・パウロ・バレット法務省大臣に詳細の追求を要請したが、トゥーマ長官の容疑を裏付ける情報は挙がっていない。
ルーラ大統領は、トゥーマ長官の供述内容を認め、「これ以上疑惑を強めるような新事実が浮上しない限り、長官の現職は維持される」との見解を示している。これまでのところ、トゥーマ長官は警察の捜査の対象にはなっていない。