ニッケイ新聞 2010年5月13日付け
「外国人の大人には日本語教育と職業訓練をセットにした制度を作り、子供には義務教育にしてちゃんと育てる仕組みにしないと、彼らは最下層に沈殿定着してしまいますよ」。そんな危惧を表明するのは、愛知県一宮市で大手派遣会社アバンセコーポレーションを経営する林隆春(60、愛知県出身)代表取締役会長だ。
「30万円出すといっても帰らないんですから、残った彼らは帰る気ないですよ」と在日ブラジル人の今後を言い切る。「この現象はもう止められませんよ。それなら根付かせる制度をつくらなきゃ」。日本に残ったブラジル人は「帰りたくない」けど「仕事がない」という環境が長引き、「無気力になっちゃってる」と見ている。
「彼らは永住希望者。残った人をどう扱うか、その部分の日本政府のメッセージが伝わってこない。景気が良くなるまでの間、技術を身につけるなど職業訓練、とくに日本語能力の向上をセットにした制度を作らないと、彼らの社会的な劣化を止められない」と警鐘を鳴らす。
愛知県下にも二十数校の職業訓練学校があるが、現状では日本語能力の関係で外国人が入学することは難しい。かといって既存の職業訓練コースに日本語講座を併設して外国人労働者の需要にあう形にしようとすると、労働局などから反対されると困惑顔をみせる。「税金を使う場合、日本人にも同じ利益がある計画でないといけない」と注文を付けられるのだという。
林さんは「特に子供が社会的に劣化する元凶は、外国人児童生徒は義務教育ではないこと」だと考えている。「だから日本人生徒なら不良として補導するケースでも、外国人の教育は義務じゃないからと警察からもほっておかれる。教師も外国人生徒は義務じゃないからあまり家庭訪問しない。民生委員も外国人ことだと積極的関わることはない」と列挙する。
日本政府の帰国支援策によって夫だけ日本に残って、妻子が帰伯したケースが多いことに関し、「今後会えない3年の間に家族間にいろいろな問題が起こるだろう」と予測する。従来から在日ブラジル人間には不倫や家庭内不和、分断などの問題が多く起きており、家族崩壊に至るケースが出てくるとみている。「せっかく大変なお金使っても、結果的に日系社会から感謝されないこともありえる」。
独自に在日外国人向けに介護、溶接などの職業訓練コースを実施しているが、「企業レベルでやってもラチが明かない。日本政府は日系人を見捨てないという意思表示をすべき」と訴え、8日に帰国した。