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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年5月18日付け

 08年のリーマン・ショックや昨年暮れのドバイ危機からやっと抜け出ようとしているときに今度は欧州の金融が危うくなり日米らの株価が急落し大騒ぎになった。事の出発点はギリシャの放漫財政であり、5月に償還を迎える国債の支払いが難しいの観測が広がり、あの神話の国が破産の話も飛び出すような瀕死の状態に追い込まれている▼欧州共同体(EU)にはポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインの頭文字をとった「PIIGS」と呼ばれる国がいずれも金融苦境に陥っている。EUがIMFと手を組んでギリシャ支援に立ち上がったのは、この悪影響が他の4ヵ国にも波及すればユーロの下落に繋がると配慮しての決断であり、このために90兆円もの支援枠を設定し危機に備えている▼今のところ、EUの緊急融資があり、第一の難関は乗り切ったようだが、このギリシャの悲劇を日本も笑って見過ごすわけにはいかない。ギリシャもイタリアも、国債などの借金がGDP比で120%位なのだが、日本は国の借金が10年度末には九百兆円にも膨らみGDP比200%に近くになり、世界最大の借金大国になる▼これは国民1人当り700万円超の負担を背負っている計算になり、とても重い。家計に例えれば、年間100万円の収入しかないのに200万円のカネを借りているのだから、これはもう悲惨な苦しさである。しかも、国債には利子がつき、もし1%金利が上がれば、九百兆円で9兆円にもなる。こうなると、もう借金を返すために借金するの地獄であり、とてもギリシャを嘲笑などできない。(遯)