ニッケイ新聞 2010年5月19日付け
ブラジルでの販売が懸念されていたアップル社のiPadが、すでにサンパウロ市のサンタ・イフィジェニア街で販売されていたことが大きく取り上げられ、止まるところを知らない海賊版市場の拡大が再び議論の的となっている。また、それを取り締まるべき海賊版撲滅委員会委員長のロメウ・トゥーマ・ジュニオール法務省長官は、中国系マフィアとの密接な繋がりから密輸貿易加担の容疑が挙がっており、16、17日付伯字紙はマフィアの〃親友〃が国家の最重要問題の解決に当たっていたと、一連の騒動に痛烈な批判を展開した。
海賊版市場で流れるものは模造品や違法コピーには限らず、不法ルートで入ってくるオリジナル商品も含まれる。その一つが先にあげたiPadで、同商品は今月28日にブラジルでも発売を予定していたものの、すでに国内で同名の商品が製造されていたことから、今月始め発売が見送られていた。そのiPadが、サンパウロ市内ではすでに、米国の販売価格より約1千レアル高い1600~2900レアルで取引されているという。
昨年も国民の46%が利用したと推定される海賊版販売による損害は、メーカーの損失や納入されない税金相当分だけで約200億レアル。海賊版商品の売買で動く金は年間約8500億レアルにも上り、ブラジル国内総生産の30%を占める。
国内で出回っている海賊版商品の8割は中国、韓国、パラグアイ製で、品目も自動車部品やタバコ、電子機器、化粧品、ソフトウェアなど多岐に渡る。
国内では衣服や履物の偽ブランドの生産が増えており、ミナス州やパラナ州がその中心となっているとされる。特に懸念されるのは、インドからの流入が多い医薬品の海賊版で、バイアグラや抗生物質の使用による被害も報告されている。
ブラジルは、米通商代表部が先月末に発表した知的財産保護違反監視リストの要注意国リストに中国と共に上げられており、今回のiPad販売で、さらにその批判が高まることも予想できる。
一方、トゥーマ長官の不正行為は伯メディアで連日大きく報道され、中国北京への公式訪問にマフィアのパウロ・リー代表を同行させていた事実や、同氏が統括する資産回復国際司法協力部署(DRCI)の内部情報を外部に洩らしていたことも発覚した。現在は、「休暇」名義で30日間の休職中だが、今後の復帰は明らかではない。