ニッケイ新聞 2010年5月18日付け
6面の寄稿「継承日本語教育を残せ!」を読んで、日系社会の今後を考える上で非常に示唆に富んだ話だと感じた。よく大上段に振りかぶって「コロニア滅亡論」をぶつ論者がいるが、常に批 判の対象はブラジル日本文化福祉協会で「かつては山本喜誉司、下元健吉、橘富士雄などの大物リーダーがいた」と現状批判に終始するパターンが多く、どこか違和感を感じていた▼いまさらコチア産組や南銀をうんぬんしても始まらない。いまのコロニアの実態は地方文協などの日系団体の集合体だ。多くの地方文協の活動はカラオケやゲートボール、芸能祭などの高齢者同士の慰安親睦が中心になっているが、将来を論じる時にはどれだけ子供がそこに参加しているかが要点となる▼その意味で日系社会の将来は、日本語学校を中心にヨサコイソーラン、和太鼓、野球などの若年向け日系活動に託されている。もし移民150年祭が盛大に祝われるとすれば、それはサンパウロ市の文協うんぬんの問題ではない。全伯の日本語学校の教室でいま学んでいる現在10歳前後の子供たちが、どんな教育や日系活動の指導を受けているかを心配する方が現実的だ。その際、周りからの協力こそが理想的な教育を実現させる鍵だと同寄稿は論じる▼その子供が60歳前後になったとき、日本移民の歴史を顕彰しようとの日系意識を持ち続けられたら、立派な150年祭が行われるだろう。そのためにいまどんな授業が必要か。自らの幼児体験に照らしてみたとき、生涯に及ぼす影響は明らかだ▼サンパウロ市など都市部では個人経営の日本語学校も多く、その役割も大切だ。今回改めて日本語教育の重要性を考えさせられた。(深)