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ルーラ大統領=強国支配の国連批判再び=イラン制裁決議は6月に=承認までには障壁が3つ=伯土外相名で文書も送付

ニッケイ新聞 2010年5月21日付け

 【既報関連】国連安全保障委員会に対し米国が対イラン追加制裁決議案を提出した18日、今後の動きを見る意向を示していたルーラ大統領が19日、「事態収拾に向けた対話の試みが振り出しに戻る事を恐れている」と発言。米英など列強諸国に支配された国連は、戦後の姿そのままと、持ち前の国連批判も再び飛び出した。

 20日付伯字紙によると、18日には「何が起こるか見るために、出るべき事柄が出揃うのを待つ」と発言していたルーラ大統領が、沈黙を破ったのは19日。
 マドリードでの欧州連合・汎米諸国会議後、イタリアのフェリッペ・ゴンサレス元首相の支援も受けたルーラ大統領は、「合意内容は、5、6カ月前に米国が同意取り付けを試みた内容と同じ」とし、国際原子力機関の提案に対するイランの同意を得る事が大切だった筈とも強調した。
 同機関提案に同意したかの発言後、態度を変えた前例があるだけに、欧米諸国には懐疑の目で見られている今回の合意だが、従来なら国際社会での調停役を務める事など考えられなかったブラジルやトルコがイランとの合意にこぎつけられたのは信頼関係の故であり、国際社会の地勢図が変わっている事を列強諸国も認めるべきだというのがルーラ大統領の言い分だ。
 そういう意味で、制裁を道具にイランに圧力をかけようとした米国の決議案提出は、国際的地勢図を読み間違えたとの見方もない訳ではない。
 国連安保理での対イラン制裁決議は、5月一杯議長国を務めるレバノンが同じイスラム圏のイランに対する制裁に乗り気ではない事、核拡散防止条約(NPT)見直し終了後でないとイランも含む条約採択が難しい事などから、今月末のNPT採択と、6月の議長国交代(次はメキシコ)を待っての事になる。
 米国にとっては、制裁に消極的だった中ロ両国の同意は得たものの、非常任理事国の中に同国への制裁に反対または消極的な姿勢を見せている国がある事も懸念材料。承認に必要な9カ国の賛同を得られなかったり、ぎりぎりの数で承認となった場合の米国の影響力低下は否めない。
 また、制裁案内容も、核関連物資輸送が疑われる船舶などへの貨物検査や弾道ミサイル関連の活動禁止、同国への大型兵器輸出禁止、銀行取引停止などはあっても、人や物、金の流れを完全に止めるものではないため、イラン国内では既に、制裁の影響は僅かとの見方も出ているという。
 ウラン濃縮問題でイランとの合意に漕ぎつけたブラジルやトルコにとっても調印直後の濃縮継続発言は予想外だったが、イランからの合意確認発言も受け、両国は外相名での文書を安保理メンバー国に送付、無用な波風を避けた対話継続を呼びかけている。