ニッケイ新聞 2010年5月21日付け
本来、市民の安全を確約するはずの警官が―。騒然となったモトボーイ2人の殺害事件などを含め、昨年より警察官による殺害事件が増加しており、警察官の権力乱用の問題などが大きく問われると共に、一般市民の間で警官に対する強い不信感が募っている。17~20日付伯字紙で取り上げられた。
4、5月に起こったエドゥアルド・ルイス・ドス・サントスさん(30)、アレシャンドレ・サントスさん(25)のモトボーイ2人の殺害事件で騒然となったほか、今月17日に起こったカンピーナス市の一家4人殺害事件も、軍警察3人の復讐だという説が強まっているなど、警察官が引き起こしたとされる事件沙汰が後を絶たない。
昨年1年間での警官による殺害事件の発生件数は397件で、前年比で75%増し。今年第1四半期では昨年同期104件の4割増になる146件が報告されたほか、4月も58件で、昨年4月の発生件数と比べて29%の増加を見せた。
身近な話では、4月にサンパウロ市南部グラジャウーで起こった52歳の女性教師の例が挙げられる。信号待ちで青になっても発進しないパトカーにクラクションを鳴らしたところ、パトカーから降りてきた軍警察は、罵声を浴びせ、車から引きずり出すという乱暴な行動に出た。事件後、同女性教師は吐き気や眩暈に襲われ、入院加療も受けた。
警察官の権力乱用への懸念も広まっており、それに関係する訴訟事件は、昨年1年間で141件。今年は、すでに25件が報告された。
また、19日にはリオ北部のアンダライー丘で軍警特殊部隊がドリルを機関銃と見間違え武装していると警戒し、家にひさしを取り付けていただけの罪のない人を撃ち殺すという悲劇も起こった。エリオ・バレイラ・リベイロさん(47)は、胸部を打たれ病院へ運ばれたが死亡した。
こういった警察官による事件増加の背景には、銃器を使った犯罪事件も増え、命の危険や犯罪撲滅へのプレッシャーにさらされていることによる過剰反応という面もある一方、権力や武力を持つ警察官の自己抑制の不足という面も否めず、一般市民の間には警察官に対する強い不信感が蔓延している。