ニッケイ新聞 2010年5月21日付け
「子供たちに原爆の恐ろしさ伝えたい」―。サンパウロ州教育局はこのほど、年間教育プログラム『平和の灯ろう流し』(Tooronagashi da Paz)を州内にある公立小中高5600校(生徒600万人)対象に実施することを決めた。教材として活用する映像の作成も始まっており、レジストロ市で8月7日に開催される被爆者追悼の「平和灯ろう流し」への参加も呼びかける。聖南西文化体育連盟の山村敏明会長とインスティツート・イカロの小川彰夫代表と共に20日に来社した同教育局の日野寛幸コーディネ―ターは、「100周年も終わった。コロニアがブラジル社会に対して貢献していくきっかけにしたい」と張り切っている。
レジストロ市で昨年8月初めて行われた「平和灯ろう流し」を教育の機会に―と主催団体を代表し、山村会長と小川代表が昨年末、日野氏に相談したことから実現した。
「唯一の被爆国の血を引く我々がブラジルに平和を伝えるべきでは」と山村氏は話す。
07、08年に実施された日本文化教育プログラム「VIVA・JAPAO」を運営・指導した日野氏が早速、教育局の会議に諮り、予算を取り付けた。
「主旨は多くの賛同を得たが、教える側の教師に知識がない問題もあるため、教材に使う映像を現在作成中」と話す。
続けて「原爆の被害を伝えるだけでなく、投下までの経緯や原子力、お盆など、総合的な知識を教えるプログラムにしたい」と説明する。
富山県が実施し、アメリカ、中国、韓国、ロシアが参加する「図画コンクール」には今年、平和をテーマとした作品を送ることも決まっている。
同プログラムの募集は今月から開始。VIVA・JAPAOの参加校の数が過去最高だったことから、教育局関係者は大きな期待を寄せているようだ。
山村会長によれば、参加が決まっているレジストロ市の学校では、毎年長崎平和祈念式典で歌われる『千羽鶴』や『原爆許すまじ』のコーラスの練習がすでに始まっており、「平和灯ろう流し」当日に披露される。
開催にあわせ約1カ月間、レジストロ移民資料館で開かれる原爆写真展で被爆の実状も伝える。
小川代表は「レジストロ側で、子供たちを受け入れる態勢作りがこれからの課題。企業や団体からの支援をお願いしたい」と話している。
「平和灯ろう流し」は、聖南西文化体育連盟、リベイラ沿岸日系団体連合会、広島文化センター、長崎県人会、ブラジル被爆者平和協会、レジストロ日伯文化協会、インスティツート・イカロの共催で、サンパウロ州教育局の後援。