ニッケイ新聞 2010年5月22日付け
保健省の発表によると、国内のクラック(ポ語はクラッキ、麻薬の1種)常習者はここ5年間のうちに38万人から60万人へと急激な増加を辿っているという。伯政府は20日、4億1千万レアルを投資して新たなクラック撲滅対策を講じることを発表した。21日付伯字紙が報じた。
今回の対策は、人口40万を越える市町村に70カ所の保護センターを設置し、食事や衛生面での生活ケアを提供するほか、麻薬常習から抜け出すための専門家によるリハビリサービスを展開する。
その他、危険な状態にある重度の麻薬依存者を30~40日間受け入れ可能な保護施設も60カ所開設する予定だ。
麻薬利用者が集まる場所に直接出向いて接触を図る保健所職員らのチームを拡充するほか、麻薬輸入ルートとなっている国境付近の警備体制を強化する。
病院の麻薬依存者専用病床を現在の2500台から5千台へと2倍に増やすという、昨年6月に発表されたが実現されていない課題も、再度盛り込まれた。
これらの撲滅対策に今年は約4億1千万レアルの予算が割り当てられ、昨年度のエイズ撲滅プログラムの29%に相当する額となった。ルーラ大統領は、「州政府、市政府、教会など各機関で力を合わせてこの問題に取り組もう」と、協力を呼びかけている。
麻薬蔓延が20年以上に渡るサンパウロ市では、10カ月前からルス、レプブリカ、カンポス・エリジオス周辺の麻薬の巣窟でのクラック撲滅活動も始まっている。クラックの常習者でこの地域に住み着く人の登録数は、442人。クラック常習のために外部からくる人も入れれば、常用者数は5倍に及ぶと見られている。
保健所職員ら約160人のチームが巡回を行って常用者と接触する数は1日あたり約300件、10カ月間に延べ8万7千回以上の接触が試みられたことになる。これまでに医療施設へ同行したのは4463件で、そのうち240件で入院が報告された。
こういった取組みにより、前記の場所の麻薬依存者たちは姿を消しつつあるが、今度はサンタ・セシーリア、イジエノーポリスなどに拡散という懸念も出ているようだ。