7人に1人が中絶=宗教の道徳観はどこへ=違法行為で健康も危険に
ニッケイ新聞 2010年5月26日付け
伯女性の7人に1人が違法である中絶を行った経験があり、全人口に換算すればその数は500万人に相当することが、保健省のデータから明らかとなったと、22日付伯字紙が報じた。
今回の調査は保健省がブラジル世論調査統計機関に委託して実施したもので、人口5千人以上の市町村に住む18~39歳の女性2002人を対象に行ったもの。
中絶に関して15%が経験ありと回答した。18~19歳で「はい」と回答した割合は6%、25~29歳では17%、35~39歳は22%と年を重ねるごとに増加する傾向がある。
中絶経験者の60%が、妊娠適合期の18~26歳の時中絶したと答えており、調査結果は中絶が若い未婚女性や年配層だけに限定された物でないことを示す。
今回の調査での中絶経験者の大半は既婚者で、すでに子供もおり宗教も持っている反面、学歴が低い傾向がみられ、調査にあたった専門家は、「彼女たちはすでに母親業を担っており他に子供が欲しくないという理由から、罪を犯してまで中絶に踏み切っている」と分析した。
また、回答者のうち15%がカトリック、13%がプロテスタント、16%が何らかの宗教を信仰しているという数字も出た。専門家は「宗教上の教理が薄れ、こういった行動を防ぐことができなくなっている」と懸念の色をみせ、「中絶は案外私たちの身近で起こっていることが分かる。友人や姉妹、隣人にも起こり得ることだ」と、調査結果に驚きを示している。
中絶の手段としては48%が医薬品を使用、55%が入院したと回答し、残りの数字に不明瞭さが残る結果も現れた。
保健省の以前の調査によれば、1990年代より、中絶はブラジル都市部の多くで女性の死亡原因の3、4番目に挙げられる。ジョゼ・ゴメス・テンポロン保健相は「中絶問題も国民の健康維持に関わる」とし、避妊具の普及に努める。
現在、妊娠12週間までの中絶を認めている国は世界人口の40%にあたる56カ国、26%にあたる68の国では母子が危険な状態にある、強姦による妊娠の場合など特別な条件下でのみ許可されている。
こういった中絶を規制する国では、懲罰を避けようと隠蔽して行われる中絶で引き起こされる死亡事故にも大きな懸念も広がっている。