ニッケイ新聞 2010年5月27日付け
中央銀行が25日、ギリシャなどを起源とする欧州経済危機の影響で外国からの直接投資が大きく落ち込んでいる事と、経常収支が統計開始以来最悪の状態を更新中である事を発表と26日付伯字紙が報じた。1~4月の第1三半期の経常収支赤字は前年同期比246・4%増の167億3千万ドルに達している。
国内消費の過熱やレアル高などを反映し、4月の経常収支は、3月の50億6千万ドルこそ下回るものの、4月としては1947年の統計開始以来最悪となる45億8千万ドルの赤字を計上。
当然、第1三半期累計も前年同期の3倍超の167億3千万ドルと赤字記録更新中で、2010年年頭に出された赤字見通し455億ドルを大きく上回る可能性大だ。
この動きを懸念する専門家の不安に輪をかけたのが、欧州経済危機などが原因で予想を大きく下回った生産部門への外国直接投資で、第1三半期の累計は、前年同期比を11・05%下回る78億8千万ドル。5月までをあわせても、今年の期待値450億ドルの21%にあたる94億8千万ドルの見込みだ。
今年に入ってからの経常収支報告は赤字拡大を伝えるものばかりで、2009年末の経常収支赤字増との発表時には10年は状況逆転との見解を示した中銀も、第1四半期終了後は、経常赤字は2011年も続き、数字上の好転は2012年以降と見解変更。今回は、外国直接投資は先延ばしされただけで中止された訳ではないから、今年後半は状況好転との見解に変わった。
景気好転が経常収支の赤字を招くのは何故かと疑問を持つ人もいるかもしれないが、経常収支は貿易収支とサービス・所得収支や移転収支を含んだもので、貿易収支赤字22億ドル以外にも、外国企業が国内での収益を本国に送金した金額や、ブラジル民が外国に旅行して使うお金、ブラジル企業が外国で使用するための機械や事務所の賃借料支払などが、経常収支上の支出として扱われる。
過去に流入した国外直接投資の結果として起きる本国への収益送金や、ブラジル企業の外国進出に伴う支出増額は肯定的要因だが、直接投資の大幅減少で経常赤字の半分も埋まらない状態は冷や汗もの。中銀や専門家は、ブラジル企業株取得など、金融部門への投資があるからまだ大丈夫だというが、同部門への投資も5月には赤字転落との予想。
中銀の予想では、5月の経常収支赤字は27億ドル。金融部門への投資2億ドルと合わせて29億ドルの赤字分は、減少が予想される直接投資の黒字16億ドルでカバー出来ず、今後の動向への懸念はより高まる。
現政権では余り表面化しないとはいえ、経常収支赤字の拡大と継続傾向は、次期政権には間違いなく頭痛の種となる。