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ストレス抱える教師達=健康向上に政府が動き=職員採用にも苦肉の策

ニッケイ新聞 2010年5月27日付け

 毎日どこかの学校で、教師が健康を害しては教室から姿を消している―。今年1月から今月21日までにサンパウロ州立の教育機関に勤務する194人の教師から健康上の理由で2年間の休職届が提出されるなど、教師の過酷な労働条件や教師不足によって揺らぐ教育の質に大きな波紋が投げかけられている。23~26日付フォーリャ紙が、官報の公表などを基に報じた。
 サンパウロ州立の公立学校では現在、全体の約8%にあたる教師が休職中。休職届の理由のほとんどが健康上の問題で、その多くは声帯の異常や背中の痛み、精神上の問題となっている。
 こういった状況の原因として、専門家らは学校側のプレッシャーや、生徒数増加で1週間の平均授業時間が33時間に増えるといった、過酷な労働条件を挙げている。
 また、サンパウロ州内の市立校教師を対象としたサンパウロ市公教育連盟(Sinesp)の調査からは、60%の教師が仕事により精神上の問題を抱えていると回答、精神上の問題が全くないと応えた数は一握りの0・9%という結果も表れた。
 統計によれば、教師らが精神の異常につながると感じているものはストレス、不安感、疲労感、苛立ち、切迫感で、多くの教師がその職業を〝苦難への挑戦〟と捉え、重荷を感じていることもアンケート結果から示された。
 州政府ではこういった教師たちの苦境を察知し、彼らに精神的なケアを施すプロジェクトを1カ月以内に展開する。具体的には、医者、栄養士、心理学者などの専門家チームを結成、サンパウロ市内にある州立教育機関に勤務する6万5千人の教師を対象に各学校を巡回する予定だ。
 一方、教室での教師不在への対応策として州教育局は25日、臨時教師の採用基準だった従来の筆記試験を取り除くことを官報で発表し、同日より施行された。
 さらに、極端に教師が不足している生物、物理、化学などの専門分野に関しては、教育学を専攻した別の科目の教師が一時的に指導にあたることが許可された。
 こういった政策に、すでに専門家からは教育の質の低下に対する批判も挙がっているが、政府側は一時的な処置だとの見解を発表。また、選挙が控えている今年は、毎年行っている教師採用試験を実施できないという事情もあるようだ。