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ルーラ大統領=思うに任せぬ事ばかり=迫られる年金調整裁可=「無い袖振れぬ」とマ財相=夢で終るか国連事務総長

ニッケイ新聞 2010年5月28日付け

 【既報関連】最低賃金1つ以上の年金受給者に対する7・72%の調整法案裁可を迫られているルーラ大統領が26日、調整率上乗せ分を支払うための財源がないという経済スタッフに経費の洗い直しを命じたと27日付伯字紙が報じた。ルーラ大統領は、退任後は国連事務総長か世銀総裁にとの思いも実現は困難との23、25日付フォーリャ紙の報道に続き、障害に直面した形となっている。

 830万人の年金生活者には気がかりな7・72%調整実現は、ある意味で大統領の胸三寸だが、経済スタッフは法案承認前から、同法案が国会を通過し、大統領が裁可しても、財源が確保できないという報告を突きつけていた。
 一方、選挙戦前にお土産代わりの年金調整裁可を取り付けたい国会議員達からは、早く裁可しろとせつかれ、完全に板ばさみの状態だ。
 本来なら、経済スタッフの提言を受け入れて裁可を拒否したい大統領だが、選挙年であるが故に経済スタッフへの経費見直し指示となった。
 政府が決めた調整率6・14%を7・72%に引き上げる事で増加する政府負担は15億レアル。マンテガ財務相は、このまま裁可したら、今年3度目となる経費削減が必要だと言う。
 また、大統領が裁可を拒否した場合、暫定令で調整率を設定し直さなければ、調整は自動的にインフレと同じ3・5%に変更されるという。
 実際には1月から6・14%の調整を行った額が支払われているため、暫定令発布は避けられないが、国民に良い顔を見せ、ジウマ候補に有利に働くよう図るには国会承認の調整率を裁可せざるを得ず、裁可すれば経費削減は免れず。年金受給者のためというより、実は、10月の大統領選挙への思惑絡みで即断できないのが実情だ。
 国会からの圧力を受け最低賃金でもインフレ以上の調整を行ってきた現政権にとり、今回の年金調整率変更裁可は、それ以外の事でも譲歩を求められる糸口となるとの懸念が広がるのも当然で、思惑通りに進まぬ事態に忍耐が試されている。
 多元外交で国際的な注目度も高く、ラ米諸国始め、フランスやスペイン、ポルトガルの首脳からも、国際舞台へとの支援を得たというルーラ大統領。
 退任後は国連事務総長か世銀総裁などにとの声も出ているが、国連に関しては、現事務総長は任期が終る2011年に再選の可能性大、人選は大陸間持ち回り、国連や安保理改革の停滞、安保理メンバー国から事務総長選出の前例無しなどの理由から、事務総長の夢実現は早くても2025年以降、大統領が80歳を超えてからという。