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伯米間の信頼関係にきしみ=イラン合意と制裁問題で=ヒラリー国務長官=「両国間に深刻な不一致」=先進国のねたみとトルコ

ニッケイ新聞 2010年5月29日付け

 【既報関連】米国のヒラリー・クリントン国務長官が27日、ウラン濃縮問題を巡って17日に行われたブラジル、トルコ、イラン3国の合意書調印以後、最も厳しい口調で「伯米両国間には深刻な不一致がある」と発言したと28日付伯字紙が報じた。同氏発言には、ブラジルは国際的な影響力を拡大しつつある段階との見解も盛り込まれている。

 17日の合意書調印から一夜明けた18日に国連安全保障理事会への対イラン追加制裁決議案提出が行われた事に見られる様に、米国始め列強各国のイランへの不信感は高まる一方。合意書調印は制裁回避のための道具という考えが、先進諸国の中では通説だ。
 これに対し、来伯中のエルドアン土首相は27日、ルーラ大統領との会談後、イランは合意書に盛込まれた事柄を規定された期日内に実行しており、合意書遵守は確実とする見解を示した上で、「今は制裁協議の時ではない」と明言。「合意書を否定するのは先進諸国のねたみ」との発言まで飛び出した。
 皮肉な事に同日、米国のワシントンのブルッキングス研究所で演説したヒラリー国務長官は、ブラジルとの協調に前向きな姿勢を示しつつも、「イラン問題に関しては完全に立場が異なる」と指摘。「イランに対して時間を与えるやり方は、世界的な危険を増す」とルーラ大統領やアモリン外相に警告したとも述べた。
 また、ブラジル訪問中の潘基文事務総長も27日、伯土両国の努力を高く評価しつつも、合意書調印だけではイランの国際的信用回復には不十分だとしている。
 同発言は、同日行われたロシアのラグロフ外相による、合意書は「核問題を平和的に解決する可能性を開くもの」と歓迎しつつも、100%の保証がなく、履行してこそのものという発言とも軌を一にするものだ。
 伯土両国がいくら対話継続を呼びかけても、国際社会にはイランに対する不信感蔓延で、6月の安保理での制裁決議採択回避は困難な事を明らかにする様な発言が繰り返された27日。
 ヒラリー国務長官は、イラン問題が伯米関係を壊す事はないまでも、ブラジルは認めうる範囲を超えたとも発言。国際的な外交成果を望んで制裁決議採択回避を図ろうとするルーラ大統領の試みが失敗すれば、国内外で負う事になる代価は大きいとも警告した。Bricsの中、ロ、印については国際的影響力ありとした一方、ブラジルは南アフリカやインドネシアと同列で国際的影響力拡大中の国と位置付けた事も、米国側の苛立ちの反映と言えるかもしれない。