ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 米、露向け牛肉輸出停止=米国へは加工品全面的に=ロシアへは8加工場の生肉=薬多用の農業にも問題?

米、露向け牛肉輸出停止=米国へは加工品全面的に=ロシアへは8加工場の生肉=薬多用の農業にも問題?

ニッケイ新聞 2010年6月1日付け

 牛肉輸出世界一のブラジルで、米国向けの加工品輸出とロシア向けの生肉輸出停止という事態発生と5月28、31日付エスタード紙などが報じた。国際的な競争力を更に高めたい農牧業部門だが、食肉加工業界では輸出停止が長引く事も懸念している。

 09年の牛肉輸出は生肉30億ドル、加工品2億2300万ドルで、米国は加工品輸出の約50%、ロシアは生肉輸出の約35%を占める貿易相手国だ。
 米国向けの加工品輸出の停止は、JBSフリゴボイ社のリコール後、4週間の実務者レベルの討議を経て、ブラジル農務省が27日夜決めたもの。リコールの原因はブラジルの牧畜業で頻繁に使われ、人体への影響も懸念されている虫駆除薬イベルメクチンの残留量が基準値を超えた事だという。
 加工品の輸出停止は、イランのウラン濃縮や綿生産業者への補助金問題で伯米両国間に微妙な雰囲気が流れている最中の判断で、JBSを発端とする加工品リコールが他社に及ぶ事を避けると共に、折角出てきた米国への生肉輸出の可能性を潰さないための処置だ。
 ブラジルでは肝臓での濃度1千万分の1以下というイベルメクチン残留基準を適用しているが、米国は今回、筋肉での濃度1億分の1以下という基準を適用。農務省は、この基準が米国の業者にも適用されているかを明確にするよう求めている。
 一方、5月30日開始のロシア向け生肉輸出停止は、29カ所の加工場を視察した同国検疫官からの通達によるもので、JBS3カ所、マルフリグ3カ所、ロドパ2カ所の8加工場が処理した生肉が対象とされる。
 昨年の輸出総量の35%に当たる32万7千トンの取引を行っているロシアは、これまでも頻繁に輸入停止処置をとっているが、今回の様にまとまった数の加工場からの輸入停止は珍しい。
 問題点の具体的報道はないが、気がかりな情報の一つは、ブラジルは世界各国が使用を禁じた農薬の主要輸入国との5月30日付エスタード紙報道。
 08年のブラジルの農薬輸入は71億2千万ドルで農薬の使用量は世界一。
 他国が使用を禁じた農薬が禁止後に明らかな輸入増加を見ている事も懸念材料で、国家衛生監督局が人体にも深刻な影響を及ぼすと使用制限したのは19品目中、有機塩素系殺虫、防黴剤、エンドスルファンの09年の輸入量は、08年の1840トンから2300トンに急増している。
 中にはパラグアイでも使用禁止の品もあり、健康面への影響審査のあり方と共に、他国が使用を禁じた農薬の流入増加を許す監査体制も問題だ。