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イスラエルが人道支援船攻撃=未明の公海上で6隻拿捕=10人死亡、60人以上負傷=ブラジル人女性も強制送還待ち

ニッケイ新聞 2010年6月2日付け

 イスラエルのガザ地区に住むパレスチナ人への支援物資輸送中の船団が5月31日にイスラエル軍に拿捕され、少なくとも10人の死者、60人以上の負傷者が出た事件で、国連安保理事会が1日、イスラエルを避難する議長声明を採択した。5月31日付サイトや1日付伯字紙などによると、拿捕された船にはブラジル出身の女性映画監督も乗っており、強制送還を待っているという。

 現地時間の5月31日午前4時半頃(ブラジリアでは30日22時半)に起きたイスラエル軍による人道支援船拿捕は、国際社会にも大きな波紋をもたらし、イスラエルへの批判とガザ地区の封鎖解除を求める声が一気に高まった。
 非政府団体フリー・ガザが派遣した人道支援船急襲で乗船者多数が死傷した事件の最大の被害国は、安保理非常任理事国でもあるトルコ。銃撃戦が起きたのは同国船籍の船で死傷者の多くはトルコ人だった事も、安保理での素早い議長声明採択に至った理由だ。
 38カ国からの乗船者と食料などを載せ、トルコからキプロス島を経てイスラエルに向かった船団には数日前から警告が発せられており、乗船者達も拿捕される事は覚悟していたが、イスラエル軍が未明のそれも公海上で拿捕を試みてきた事は完全に予想外だった。
 サンパウロ州出身の映画監督イアラ・リーさんは拿捕直前にイスラエル軍ヘリの音を聞き、兵士達が強引に乗り込んでくれば、女性は叫び、男性は乗船を拒否するために抵抗する筈だとフェイスブックに書き込み。本人は銃声などを耳にしただけでケガもしてないが、イタリア在住のブラジル人男性は、拿捕された船団に参加していたイタリア人でジャーナリストの妻の行方を捜しているなど、ブラジルも無関係ではない事件だ。
 国際社会の批判に対しイスラエル側は、同船団は人道支援のためではなく、武器を運ぶテロリストのものと主張。軍兵士の武器使用は、乗船者から攻撃を受けた後の正当防衛だとも釈明しているが、拿捕された人々は「兵士達は船に乗り込むと同時に射撃を加え始めた」と主張している。
 アモリン外相は、在伯イスラエル大使を外務省に呼んで説明を受けると共に、人道支援船に対する武力行使に強く抗議したが、同大使は会談後、ブラジルは自分達の釈明を聞こうともせず、一方的に抗議してきたとブラジルの対応を批判したという。
 中東で唯一友好的な国であったトルコを敵に回した形となったイスラエルに対しては、米国やロシアも厳しい批判の声を上げているが、1日付サイトによれば、自主退去を拒んで強制送還となったトルコ人乗船者らは早くも自国に着き、イスラエルのやり方を激しく批判し始めている。