ニッケイ新聞 2010年6月3日付け
サンパウロ市パカエンブ競技場で1日に持たれた全国労働者会議は、リーダー達が次期大統領選で労働者党(PT)のジルマ氏支持を呼びかけるなど政治色の強い集会となったと2日付伯字紙が報じた。民主社会党(PSDB)政権批判、同党から出馬のセーラ氏への反対票要請の場となる事を予期した労働総連合(UGT)は参加を見合わせるなど、次期大統領候補への要望書採択のための会議は、今ひとつ足並みが乱れた会議となった。
中央統一労組(CUT)やフォルサ・シンジカル(FS)、ブラジル総労連(CGTB)にCTB、ノヴァ・センロラルの5中央労組が参加した今回の会議の中心議題は、社会福祉費拡大など290項目からなる要望書の採択だった。
だが、現実には、ルーラ政権の政策維持を訴える形で、PSDBのフェルナンド・H・カルドーゾ政権やセーラ氏を批判し、ジルマ氏支援を呼びかける政治集会的色合いが濃いものとなった。
この傾向が特に顕著だったのは、セーラ氏への批判と共にジルマ氏支援を訴えたFS会長のパウリーニョことパウロ・ペレイラ・ダ・シウヴァ下議。同下議は、「ルーラ政権のプロジェクトは上手く機能しており、継続されるべき」と強調して、全会衆にジウマ氏支持を呼びかけた。
ただ、要望書採択後にリーダー達が演台に立つ頃は、3万人の予想に反し1万5千人の参加と、ただでさえ少なかった会衆が退席し始めており、会場費13万5千レアルなど、総額80万レアルを費やした会議は、盛り上がりにかけたまま終ったようだ。
参加者の中には、集会の内容や目的も知らされないまま、サンパウロ市までただで旅行できると誘われて参加したリオ州の高齢者が80人余りいるなど、政府支給の活動資金が正しく使われているとは考え難いケースもある。
5月23、24日付エスタード紙によると、全国で次々に登録されている労働組合は1日に1つの割で増えており、労働者の権利と利益保護という目的を忘れ、政府が支給する活動資金目当ての営利集団となっているものも多いようだ。
名前だけの請負業者と成り下がった労働組合に330万レアル支給の報道もあり、会計監査さえ受けていない労組にも支給される活動資金総額は20億レアルに上る。
全国の下部組織をまとめる中央労組には、PT寄りのCUTや、PSDBに近い社会大衆党(PPS)や民主党(DEM)メンバーが多いUGTなどの政党色もあり、政権政党の交替は活動資金の支給額にも影響するという。
5月31日付エスタード紙記載の、労組間では土地取得や活動資金確保のための会員獲得競争まであるという記事が真実なら、労働者会議での足並みの乱れも当然の事といえるかもしれない。