ニッケイ新聞 2010年6月10日付け
ブラジル地理統計院(IBGE)が8日、今年第1四半期の国内総生産(GDP)は、前期比2・7%、前年同期比9%の高成長を遂げたと発表した事を9日付伯字紙が報じた。経済成長は減速化の兆しはあるものの、年間成長見込みも7・8%に上方修正された。
今回発表の前期比2・7%という成長率は、年率では11・2%という高いもので、第1四半期のブラジルは中国並みの高成長を遂げた事になる。
また、1996年の統計開始以来最高の前年同期比9%という数字は、09年第1四半期が国際金融危機下で井戸の底の状態であった事も反映。それでも、世界60カ国対象の調査(現時点で第1四半期の数字提示は45カ国)でも6位となる高成長率で、ブラジルはアジア圏以外で唯一のベスト10入りを果たした。
特に注目されるのは、国際金融危機の影響が最も大きかった工業生産と投資が危機直前の数字を上回った事。工業生産の前期比4・2%、投資の同7・4%成長は、年率では14・6%と26%という高率となる。
工業生産回復は、前年同期比15・2%成長の商業、同12・4%の交通運輸といった数字からも読み取れる。機械設備などの資本財やサービス輸入が39・5%成長というのも、投資増額を反映したものだ。
サンタンデール銀行の分析によれば、09年第3、第4四半期も経済成長率が年率10・4%に達しており、年率10%台の成長はここ3四半期連続の事だという。
ただ、社会経済開発銀行(BNDES)が、経済が年5~5・2%成長するためにはGDPの22%の投資が必要と試算した事からいえば、現在のGDP19%という投資はまだ不十分。現在のブラジルは高水準の経済成長を支えるだけのインフラが整ってないとの従来からの専門家の意見が裏付けられたといえる。
また、第1四半期の高成長を支えた減税処置終了前の駆け込み需要が終わった第2四半期は、梱包用の波型ダンボールや自動車の減産、荷物輸送量減少の報告がある他、3月に前年同月比26%増を記録した自動車販売も、4月が同17%、5月が同4%の伸び。一般消費の動きも沈静化してきているようだ。
第2四半期の経済成長は徐々に減速している状態だが、サンタンデール銀行は年間経済成長予想を6・3%から7・8%に上方修正。別のアナリストも6%以下の成長はありえないとの見方を示している。
なお、高成長によるインフレ回避のため、9日の通貨政策委員会(Copom)での政策金利引上げは0・75ポイントとなる見込み。政府が先日発表した100億レアルの経費削減では、インフレ抑制には不十分との声も再び上がっている。