ニッケイ新聞 2010年6月12日付け
10月の選挙に向けての党大会開催期間初日である10日、緑の党(PV)が大統領選候補としてマリーナ・シウヴァ氏を正式に承認した。大統領選を二極対立では終らせないとの決意を表明したマリーナ氏は、セーラ氏との決選投票実現を祈ってくれと大会参加者らに呼びかけた。
11日付伯字紙によると、「信仰者は祈り、信仰を持っていない人は応援を」と求めたマリーナ氏。その願いは、三つ巴の戦いを勝ち抜き、セーラ氏と決選投票を争い、「ブラジル初の黒人女性大統領」になる事だ。
ゴムの木の樹液採集に従事し、16歳まで文盲であったというマリーナ氏は、底辺ともいうべき貧困を体験するという暗い過去を克服し、アクレ連邦大学で史学を専攻。26歳で大学終了後は、州議、下議を経、最年少で上議当選を果たした。環境への取組みでは国際的に知られる人物だ。
ルーラ政権では環境相を務めたが、持続可能な開発や成長への考えは、経済成長を前面に押し出す同政権内では十分に受け入れられず、自らの信念に基づいた活動を行うために環境相辞任。その後PVに移籍した。
このような経緯を持つマリーナ氏は、労働者党(PT)を去った痛みと共に選挙戦を戦う事になり、PTの業績や同党で共に戦った同士の存在を認めつつも、PTのジウマ氏と民主社会党(PSDB)のセーラ氏のみの二極対立を打ち壊すとの意向を表明。
「許されればPTの元同志達と共にセーラ氏との決選投票を戦いたい」との言葉は、成長路線派で閣内での確執も生んだジルマ氏との対立姿勢を示すものでもある。
マリーナ氏が特に強調するのは教育問題。自らも無学の文盲だったが、教育を受ける機会を得た事で今があると話し、副大統領候補ギリェルメ・レアウ氏も中流階級出身だが、質の高い教育のおかげで国内でも有数の成功した企業家となった人物だと紹介した。
10日付エスタード紙は、映画家のフェルナンド・メイレーレス氏が「マリーナ氏は最も広い視野にたった展望を持つ候補」で、「自分なら、同氏を大統領、セーラ、ジルマ両氏を閣僚に据えた政権を考える」と述べた文を掲載。向学心に富み、常に前向きなマリーナ氏は、英国紙が08年に「地球を救いうる50人の人々」にラ米から選んだ唯一の人物で、ノーベル平和賞候補にも挙がった事がある。
ブラジルや地球の将来を見据えて歩む事をモットーとする企業の社長を休職して選挙戦に臨むレアウ氏と、環境保全や地球との共存を念頭に置いた持続性のある成長・発展を目指すマリーナ氏は、選挙活動での資金の流れの透明性なども重視。今年の選挙から適用と決まったフィッシャ・リンパ法案を積極的に推進したPV党候補者達の選挙戦は既に熱い。