ニッケイ新聞 2010年6月17日付け
8日に下院の特別委員会に提出された環境保護法改定案は農牧畜業者を益するのみとの批判が出ていたが、保護区域回復のためには、現行法維持の場合ですら年60億レアルの経費がかかると世界銀行が試算したと16日付エスタード紙が報じた。09年末に発表された地球温暖化ガス削減計画にも逆行する保護法改悪を阻止しようとの声が内外で高まっている。
今回提出された環境保護法改定案は1999年に提出された改定草案をもとにしたもので、環境への悪影響は99年草案以上だとされる。
99年草案は、法定アマゾン内の私有地での森林伐採許容限度を20%から50%に引き上げるというもので、社会からの強い反対で国会採決には至らなかった。
ところが、今回の新改定案は、法定アマゾン内の私有地での森林伐採許容限度を、150ヘクタール以下の森林地帯の60%、熱帯雨林と生物の多様性の高い草原地帯を結ぶ地域の50%に引き上げるというもの。
その他、森林伐採禁止地域(川から30メートルまで)を7・5メートル以内に縮小する、2008年7月までに不法伐採をした者は罰則免除、伐採禁止区域などの制定権を州政府に与えるなどの変更が主な点だ。
これらの改定により、保護区域の縮小と不法伐採者の再植林義務免除、選挙などに都合の良いように各州が規定を改悪する可能性が高まるといった悪影響が出てくる。
賛成派は、開発に伴う森林破壊正当化のため、新たな伐採許可地域を環境経済地区と呼び、過剰伐採で土地の生産性低下の場合は他の森林地帯への農地移転を認める内容さえ盛込んでいる。
一方、世界銀行や環境保護団体は、法定アマゾン内の農牧適地は17%程度で、伐採や耕作を繰返せば土地の生産性は更に低下し、降雨の状態にも変化を及ぼすと警告。
国内には1億ヘクタール以上の農耕可能な土地があるのに保護地域を縮小し、森林破壊拡大を許す改定案の提出時には、環境保護推奨者が赤いカードを提示するという抗議行動も行われた。
また、世銀報告にあるように、現行法下でもブラジル政府が国際的に公約した2030年までに地球温暖化ガスの排出量を37%削減するという目標達成は困難で、森林伐採によるガス排出量増加分を取り戻すための費用は年60億レアル。
グリーンピース他の非政府団体(NGO)が2000年に行った調査によれば、国民の80%はアマゾンの森林地域削減に反対しており、森林保護法改悪に賛成する候補には投票しないという。
ルーラ大統領も選挙年である今年は同法改定案の採決は行いたくないと発言しているが、4月に立ち上げられた〃SOS森林運動〃では改定案への異議申し立てと現行法維持を呼びかけている。