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川村真倫子松柏園長=教師生活60年祝い幕引き=父兄OBら800人集まる=実録映像公開と著書出版

ニッケイ新聞 2010年6月18日付け

 「あらあらお久しぶり!」。松柏学園の川村真倫子園長(81、二世)の教師生活60周年を祝うセレモニーが11日夜、サンパウロ市アニェンビー国際会議場のエリス・レジナ講堂で行われ、800人以上のOBや父兄が駆けつけ、あちこちで恩師を囲んではそんな声が賑やかに響いた。自宅の一角を使った日本語教室から始まり、多くの協力の下に大志万学院を設立して、ブラジル教程に日本文化の教育を組み込む独自のあり方を切りひらいた60年間を振り返るドキュメンタリー映像の上映と、著書の出版会も同時に行われた。

 「あとのこと、心からよろしくお願いします」。教壇には生涯立ち続けるが、公式な場からの〃幕引き〃と位置づけられたこのセレモニーの最後で、川村園長はそういって深く頭を下げた。「いつお迎えが来ても良いように、お世話になったみなさんにこの機会にお礼をいいたい」。
 アマウリ・ジュニオールのテレビ番組でもおなじみ、同校OBの山井ケンジさんが司会を担当し、「先生は第2の母。日本語だけでなく、倫理など人として大事なことを学んだ」と恩師への気持ちをのべた後、松柏大志万合唱隊がみごとなハーモニーを響かせた。
 倫理研究所(本部=東京)の丸山敏秋理事長は「美しい日本語は日本で失われつつあるが、ここ松柏にはある。我々にとって大きな希望であり誇りです」と讃えた。
 今回の企画者・平田マリオさんは、「先生の教えをどうしたら未来に残せるかと考え、本を書きたいという先生の希望を聞いてアイデアがわいた」と説明した。
 子供が大志万学院で学んでいるインスチツート・パウロ小林の小林ビットル代表の挨拶に続き、OBの飯星ワルテル下議は「川村先生が私たちの中に播いてくれた種をどのように育てていくか、それが我々の使命」とあいさつした。
 姉妹校提携する小櫃(おびつ)小中学校のある千葉県君津市の鈴木洋邦市長らからの祝電が紹介され、映像「厳しさありがとう」が約1時間上映された。
 1927年に日本で受胎して渡伯後にボツカツで誕生した川村さん。父親の厳しいしつけや、41年に教育のために訪日して体験した太平洋戦争の爆撃の様子。ベルリン交響楽団指揮者のマサユキ・カルバーリョさんら教え子が次々に登場して「あの学校で日系人としての誇りを学んだ」などと恩師への感謝のメッセージを語った。
 94年に訪日し大相撲で三段目優勝を果たした東旺(森田あずまおう やすひと泰人マルシオ)も「松柏で学んだから相撲の世界に慣れることができた」と画面から語った。上映後、制作者の奥原マリオ潤さんが壇上からあいさつした。
 川村さんの著書『人はみな言魂(ことだま)の幸(さきわ)ふ光』(TOブックス)出版を進めたインヴェル・ジャパンの大井康之代表取締役も、「15歳の息子を連れてきたら、アマゾンの大自然より松柏の授業を気に入ったといっていた」とし、「この本を日本で広めたい」との抱負を語った。同書の問い合わせ先は大志万学院(11・5908・0019、担当=アオキ・ミレーネ)まで。
 川村さんは講演の中で「ブラジル人の特性の上に日本人の心をのせたら、もっともっとブラジルを良い国にできる」と語り、全人教育は世界に通じると熱く語った。
 最後に、恩師を中心に松柏大志万合唱団に加えて卒業生が前に集まり、大きな声で松柏の歌を合唱した。