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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年6月18日付け

 元シベリア抑留者に一時金を支給する特措法が日本の衆院で16日に可決されたが、17日午後現在で在聖総領事館に問い合わせても海外在留者に適用されるかどうか分からないという。平和祈念事業特別基金という団体が詳細を検討して発表する予定だ▼ロンドリーナで写真館を経営していた安中裕さんは、終戦の一週間後、樺太でソ連機による機銃掃射を受け、多数が皆殺しにされる現場を目撃し、救護活動に当たった。そのあとシベリアで強制労働させられた。20代だった安中さんはどうにか生き延びたが、「年配の人たちは、寒さと栄養不良のため毎日死んでいった。カチカチの凍って死んでいる人を穴のなかに放り投げる作業が続いた」と記者に語っている。48年にようやく抑留生活が終わった▼サンパウロ市在住の谷口範之さんの体験談も壮絶だ。「収容所に入ってわずか4カ月のうちに243人、全体の4割が死亡した」という地獄絵そのまま。「灯りが見えるぞ。日本の灯りだ」。46年の大晦日夜半、帰還船の甲板を埋め尽くした、解放された抑留者たちから嗚咽が漏れ、谷口さんの頬にもとめどなく涙がながれた▼二人とも80代半ばと高齢であり、一刻も早く給付方法を決めて欲しい。もちろん海外在留者が対象から外れることがないよう、しっかりと議論して欲しい。来週25日からは在外投票も始まる通り、国外在住者も日本国民としての権利が保障されていることは、在外選挙権を認めた最高裁判例をみても明らかだ。本日、102周年目の「移民の日」を迎えて改めて思う。たとえ帰化していようと在外だろうと、移民は移民、抑留者は抑留者ではないか。(深)