懸念増す教室内の虐待=教師が生徒をイスに縛る=疑われる学校側の対応
ニッケイ新聞 2010年6月19日付け
30年間教壇に立ってきた女性教師が、言うことを聞かない生徒の口を粘着テープで塞ぎ、イスに体を縛り付けた後平然と授業を行っていた―。16日ブラジリアで発覚したこの事件は18日付エスタード紙で取り上げられ、教室内での教師の振る舞いに大きな懸念があがっている。
被害者となったのは注意欠陥障害がみられる5歳児のI・S君、専門家の診断より普通校への通学を薦められていた。
教師歴30年のファチマ・マリア・ゴメス・ボルジーニ氏(49)は、その日落ち着きがなかったI・S君を教室の隅のイスに縛り付け、その口を幅広の粘着テープで塞いだ上、泣きじゃくるI・S君を無視して他の生徒に対し授業を続けていた。
給食を運んできた給仕係が異変に気が付き、校長に通告したことから表沙汰になった。学校側が教職員と父兄代表からなる運営委員会を招集した時点でやり過ぎに気づいたファチマ氏は、その場で被害者児童父兄に謝罪したが、謝罪だけで納得しないI・S君の母親の要請で警察に通報されることとなった。
一時的に逮捕され事情聴取を受けたその女性教師は、児童に対し〃懲罰〃を与えただけだと発言しており、連邦直轄区教育局は女性教師が教壇に立つのを当面差し止めることにし、本格的に同件の調査を開始した。
学校側の資料からは何の非もなくまじめな教師として知られていたファチマ氏だったが、警察に届いた匿名での証言からは児童らが同氏により暴力をふるわれていた事実も浮上しており、警察は父兄側に証言を集めるよう要請している。同氏には最高4年の拘留が言い渡される可能性がある。
一方、サンパウロ州ソロカバ市の州立学校では男性教師の暴言が原因で登校拒否になった児童の例も報告されている。15歳のある少女は、今年に入ってから2カ月間にわたり、教室内で「卑怯者」「無能」呼ばわりされていたという。
その教師の授業を避け登校拒否になった少女を見た両親は学校側に通告したが、その対応を不服として少女を転校させた。その後両親は教師と州を相手とした裁判も起こしている。
これらの教師としてあるまじき振る舞いに、専門家からは多様な生徒に対応する能力が身に付いていないとの懸念の声も挙がる。教師と生徒の信頼関係の揺らぎは校内暴力などの問題も生み、リオ・グランデ・ド・スル州では、ポルト・アレグレ大都市圏の12校で警備員を配置して安全を図る動きも出ている。