巨匠サラマーゴ逝く=ポルトガル語文学を高め=世界に数多くの作品残し
ニッケイ新聞 2010年6月22日付け
「独特の文体でポルトガル語の奥深さを追求しながら、人生の不条理さをも描き出している」。18日午前、ポルトガル語文学で唯一のノーベル文学賞受賞者として有名なポルトガル作家ジョゼ・サラマーゴ氏(享年87)が、多臓器不全のためスペイン・カナリア諸島の自宅で亡くなった。同氏の死を偲び、一斉に同氏の作品とその人生を追いかけた19日付伯字紙紙面には冒頭のような評価が並んだ。
同氏は政治、社会的に確固とした立場を取って意見を主張していたことでも知られる。ポルトガル紙Diario de Noticiasの副編集長を務めジャーナリストとして活動していたが、共産党に所属し独裁政権に対する政治批評を書いたことから職を追われ、80年代以降、文学作品の執筆に力を注いでいた。
ポルトガルとスペインが政治的に統合して一つの国になるべきだというイベリズモを主張し論争を巻き起こしたほか、無神論者である同氏の考え方がキリスト教の教えに相反するものであることも公にされてきた。
1982年の「修道院回想録(Memorial do Convento)」で世界的にその名を知られるようになり、哀れみや皮肉から現実の世界をリアルに描いたと評された「白の闇(Ensaio sobre a Cegueira)」で98年、ポルトガル語文学初のノーベル文学賞を受賞した。
47年に最初の小説「Terra do Pecado」を発表してから約40作の小説、詩集、戯曲を執筆しており、昨年の「カイン(Caim)」が最期の作品となっている。小説「あらゆる名前(Todos os Nomes)」「リカルド・レイスの死の年(O Ano da Morte de Ricardo Reis)」「見知らぬ島への扉(O Conto da Ilha Desconhecida)」など邦訳作品も数多い。
「白の闇」は、08年に「ブラインドネス」と題されブラジル、日本、カナダ合作で世界中の人が盲目となった状況を描いた心理サスペンスとして映画化へ。〃真に物事を見る〃ことを問いかけた同作品は、世界で大きな反響を呼んだ。
同氏の遺体は20日、家族や友人に見守られての葬儀後、リスボンの墓地で火葬に伏された。亡くなる直前まで執筆していたという政治的批判が込められた次作品は未完成のままに残され、発表に関しては話し合いが行われているという。