ニッケイ新聞 2010年6月25日付け
サッカーの試合中を狙う強盗事件が相次ぐ中、一件が未遂で食い止められた。23日未明、サンパウロ州サンジョゼ・ドス・カンポス市にある民家の床下からW杯ブラジル戦の騒ぎに紛れての銀行強盗決行を企てていたと推測できる、全長400メートルにわたるトンネルが発見された。24日付伯字紙が報じた。
直径70センチメートルのトンネルは、同市セントロにある一軒の民家の床下から下水道へとつながっており、下水道の先に掘られたもう一本のトンネルは市内にあるブラジル銀行の金庫下まで続いていた。
同銀行の警備員から夜中に不審な物音や奇妙な震動があるという通報があり、15日前より軍警察が調査を進めていた。そのトンネルは金庫真下まで伸びているものの、コンクリートの床には手を付けられていない状態でとまっている。
警察では、容疑者らが25日午前11時から開始されるブラジル対ポルトガル戦の騒ぎに紛れてコンクリートを爆破し、金庫内に侵入する予定で時期を待っていたのではないかと推測している。同銀行支店はブラジル中央銀行の資金管理もしており、25日の試合時はサービスを一時停止する予定だった。
軍警察が立ち入った際、住居はすでにもぬけの殻で、台車などトンネル作業用の備品のほか、拳銃8丁が発見された。そのうち4丁はイスラエル製であることも明らかとなった。
現場に踏み込んだ警察は、容疑者がトンネルや下水道網に隠れている可能性があるとみて捜査したが、トンネル内は無人だった。付近では泥まみれで見つかった不審人物が一人取り調べを受けたが、現時点では容疑者はあがっていない。
近隣の住民の話によれば、民家は約2カ月前から目立たない夫婦によって借りられていた。住民は人の出入りは多くなかったと証言するが、現場からは10以上のマットレスが発見されており、15人もの人が事件に絡んでいる可能性があると推測されている。
警察では、05年に起きたセアラー州フォルタレーザでのトンネル強盗事件など類似事件との関連性を調べていく。昨年12月には、デカセギ帰りの日系人が関係したサッカーブラジル選手権優勝決定戦を狙って現金輸送会社から2千万レアルを持ち去るトンネル強盗事件も起こっている。