ニッケイ新聞 2010年6月29日付け
総選挙や参院選が近づくと、気掛かりなことがある。移民や海外在住者の夢であった選挙権が認められたのは大いに喜ばしいけれども、サンパウロ総領事館の管轄を始めとし、投票率がなんとも低くすぎるのだ。確か―ブラジルでは有権者の15%程度しか投票所に足を運ばないし、こうした傾向はアメリカや他の諸国も同じようなのが、真にもって情けない▼この哀しむべき現象は、移民の政治的な関心が低いからと言うよりは、大使館や総領事館(というよりは、日本政府)の配慮不足によるところ大きい。投票率の低さの最大原因は、選挙区が広大すぎて投票所に出向くことが困難なのである。サンパウロを例にとると、投票所はサンパウロ市の文協ビルだけである。この一箇所だけでは、清き1票の行使も難しい▼サンパウロ州だけで日本列島と同じ広さだし、これに南麻州も含まれるから―サンジョアキン街の投票所まで出向くのは―とても無理なのである。郵便投票もあるが、これとても、日本とブラジルの郵送時間を考えれば現実的な対応ではあるまい。投票の公正さや管理のこともあり、投票所の増設は簡単ではなかろうが、そこを何とか―が願いなのです▼この7月11日の参院選は、与党の民主党が勝つか、自民党と野党が過半数を獲得できるかが問われる大切な選挙であり、1票の重みはこれからの政治を左右するほどに大きい。もし―野党圧勝で衆参の「ねじれ」が起これば、国会論争が活発化し、国民の政策を見る眼も厳しくなり、鳩山さんかの夢物語の政治から離れる斬新な見解と意識が国民に芽生えるかもしれないのだが。(遯)