ニッケイ新聞 2010年7月6日付け
SUS(統一医療保険システム)のデータをもとに行われたザンガリ研究所の2010年暴力事件発生地域調査では、1997~07年の10年間に起きた殺害事件で死亡した女性の数は4万1532人で、1日あたり10人もの女性が何者かに殺害されて亡くなった計算となる。4日付エスタード紙が報じた。
殺害事件による女性の死者の割合は、人口10万人あたり4・2人。コロンビアの7・8人、南アフリカ共和国の25人といった数字よりは低いものの、ヨーロッパ諸国の10万人あたり0・5人に比べると高い数値であることが分かる。
都市別では、ロライマ州アルト・アレグレが1番多く22人、リオのシルヴァ・ジャルジンが18・8人、パラー州タイランジア17・8人、エスピリト・サント州のセーラ17・4人とジャグアレー15・3人が続く。国内50都市で10人を上回った。
州別にみると、エスピリト・サント州の平均が10・3人と最も高く、低い州はマラニョン州の1・9人。サンパウロ州内は2・8人と国内4番目に低い数値だったが、アメリカのカリフォルニア州1・2人、テキサス州1・5人といった数字と比較すると低い値とはいえないようだ。
女性の殺害事件による死者数は男性のそれと比べ1対9と低い割合だが、その犯罪要因は大きく異なる。男性が被害者となる場合は、麻薬取引や暴動など都市周辺での問題に巻き込まれる事件が大半を占めるが、女性の場合は家庭内暴力による事件が主となる。男性の殺害事件が都市部に集中しているのに対し、女性が巻き込まれる事件は郊外で発生することが多いのも特徴だ。
女性が殺害される事件では、加害者は現在又は以前の夫、恋人、愛人といったケースが目立つ。恋愛関係のもつれで女性を支配できないことに不満を抱く男性の衝動が、犯行にいたる大きな動機として挙げられる。
サンパウロ警察の調べでも、今年5月までに起きた女性殺害事件での主な殺害動機には25%で女性が性行為や交際継続を拒んだことに起因していると報告されており、50%が些細なケンカ、10%が嫉妬などの恋愛感情に起因していた。
心理学者によれば、男性優位の文化が根強い地域になるほど女性への暴力事件が増える傾向があるという分析もあり、警察はこういった犯罪は未然に防ぐのが難しいと懸念している。