ニッケイ新聞 2010年7月8日付け
1965年に制定された現行の環境保護法を改正するために提出された新たな環境保護法案が下院の特別委員会で承認され、下院本会議で審議される事になった。7日付伯字紙によると、原案の一部を修正した改正案は、農業関係者と環境保護を主張するグループとの間で約6時間の議論を経た後に承認されたという。
ブラジル共産党(PCdoB)のアウド・レアルベロ下議が提出した環境保護法改正案は、環境保護を訴える人々からの批判の声が続き、原案提出から1カ月後の5日に修正案提出となった。
最も批判されたのは、現行法が川から30メートル以内とする伐採禁止区域を7・5メートル以内とし、伐採禁止区域制定権を州政府に委譲する点など。承認されれば、森林破壊が益々進み、原生林の回復も望めなくなる上、農耕、牧畜のために不法伐採を行った農家が無罪放免となれば、環境法遵守は更に難しくなると懸念されていた。
今回承認の修正案は、川から15メートル以内を伐採禁止とし、現行法の伐採を禁ずる丘陵地の頂や中腹については各州の判断に委ねる。また川沿いの低地は伐採禁止区域から除外するという。
また、所有地の原生林は最低20%(法定アマゾンでは80%)を保存し、それ以上伐採した場合は原生種の植林を義務付けるという部分を、4農業区画(自治体毎に20~440ヘクタール)未満の土地所有者は原則適用外とし、これ以上の規模の場合も20%を残せばよいとする。
更に、禁止区域での伐採や許容面積を超える原生林伐採は罰金と生産物差押さえとするという部分も、08年7月以前の伐採者は懲罰免除、植林は原生種にこだわらないなどが盛込まれている。
これらの改正で現行法なら懲罰対象となる筈の不法伐採農家の9割が救済されるといわれ、ルーラ大統領が08年7月に提唱した環境保護法遵守のための懲罰適用は実質的に無効となる。
伐採禁止区域が原案より拡大し、禁止区域制定権も州政府への全面委譲とならなかった点などが不満な農業関係者や、改正法は現行法改悪とする環境保護者が集まった委員会審議は、賛否両論が飛び交い、6時間に及ぶものになったという。
同法案が農業面での国際競争力を高めると歓迎する人々もいるが、カンピーナス大学生物学研究所のトマス・レヴィンソン教授は、農業面の競争力はかえって低下すると懸念。同法案が承認されればアマゾンだけで7千万ヘクタールの森林伐採が進むとの試算もあり、森林破壊や植生変化に伴う気候その他の面への影響を懸念する研究機関や環境保護団体では、下院本会議での承認阻止に向けた抗議行動や署名活動も計画しているようだ。