ニッケイ新聞 2010年7月15日付け
1990年7月13日に裁可された青少年保護法(ECA)発令20年を記念し、連邦政府が14日、両親、教師、世話人の誰であっても子供に手を挙げれば罪を科されるという、児童への体罰を禁止する新たな法令案を上程した。同法案は国会で審議された後、ルーラ大統領による裁可を受ける必要がある。13、14日付伯字紙が報じた。
ECAでも児童への「不当な扱い」を禁止する項目はあったものの、その具体的な基準は示されていなかった。今回の法案では「体罰」や「過酷で下劣な扱い」の例として、叩く、つねる、髪の毛を引っ張る、突き飛ばす、一定の場所に留まるよう強要するなど、痛みやケガといった結果を招く可能性のある行為が列挙された。
こういった禁止行為は親族、隣人、職場の同僚など第3者の告発によって罰せられることになり、事態が深刻な場合には1~4年の拘留が科される可能性がある。
人権局の青少年人権擁護局のカルメン・オリベイラさんは「今回の法令は家庭内環境だけではなく、学校や擁護施設などの現場で児童教育に携わる全ての人を対象としている。その狙いは、体罰ではなく会話を重視したしつけの習慣の改革にある」と、説明している。
Disque100に寄せられる通報の3分の1が家庭内暴力に関するもので、養女として引き取った2歳女児を虐待した検察官が8年の実刑を言い渡されるなど、児童虐待の実態が問題視される中、ECAでうたった青少年の権利、教育やしつけの方法を問いかける内容の法案だ。
1日には、サンパウロ市北部で29歳の父親が6歳の息子に対して、玉ねぎを食べるよう強要して捕まった例も報告されている。用意された食事を食べようとしない息子に腹を立てた父親は、40分にわたり叩くなどの体罰を与えたうえ、罰として生玉ねぎ4個を食べるよう強要。児童は病院に運ばれ、それを目撃した祖父が警察に通報した。
14日上程の同法案は下院と上院で審議された後、ルーラ大統領の裁可を経ることになるが、フォーリャ紙が行ったアンケート調査では新法令の制定に反対する人が8割以上と大半で、保守的な立場をとる意見も多くあがっているようだ。
世界で初めて体罰の禁止を法律で義務付けたのはスイスで1979年のこと。その後、29カ国で同様の法令が導入されている。