ニッケイ新聞 2010年7月15日付け
「私も70歳になり耳が遠くなり、好きなカラオケも止め、今は新聞を読む事が一番の楽しみです。耳の聞こえている時は気付かなかった新聞のありがたさ。いま心にしみじみときています」。編集部には多くの郵便物が届く。催しの招待状や刊行物が主なものだが、励まされたり、和まされたりする読者からの便りもときおり混じる。そのなかの一つだ▼送り主はミナス州のサンゴタルド在住の田中義文さん。初めて書いたという地元でのソフトボール大会の記事に添えられていた。読む喜びを再認識するとともに、書くことへの挑戦。セラードに賭けた開拓魂、古希を迎えてもなお―といったところだろうか▼読む喜びに加え、かつては聞く喜びというのが大きかった。遠隔地であるほど、新聞よりラジオが重要だったという。農産物の市況は速報性の面で欠かせず、農作業の合間にかかる懐かしいメロディーが日々の安らぎとなった▼コロニアの媒体として大きな役割を果たしてきたラジオ史を、東京在住の平原哲也さんが「日本時間」としてまとめ刊行した(本日付7面詳報)。番組の内容などが詳しく資料をもとに記述されており、当時のコロニアを知る大きな手掛かりとなることは間違いない。経営サイドの資料も多く、メディア史としても貴重だ▼現在も〃日本時間〃を流している番組を紹介する項では、ニーズを知るためか、聴取者と制作者(アナウンサー)との距離感が印象的だ。わが身を振り返り、冒頭に紹介した手紙の結びにあった「ニッケイ新聞バンザイ!」とのエールをしっかりと受け止めたい。(剛)