ニッケイ新聞 2010年7月21日付け
16日に民主社会党(PSDB)の副大統領候補インジオ・ダ・コスタ氏が、労働者党(PT)はコロンビア革命軍(Farc)とつながりがあり、ジウマ氏は無神論者などと批判した事からPTがインジオ氏告発に動いたが、セーラ氏は「PTとFarcのつながりは周知の事実」と副候補をかばう発言。選挙戦は泥合戦的色合いを強めてきたようだ。
インジオ発言とそれに続く両党の反応については17日以降の伯字紙が連日報道中だが、〃若気の至り〃では済まない部分も出てきたようだ。
問題になったのは、PTはFarcとつながりがあり、麻薬組織とも関係している、カトリック信者といいながら神が存在するか否か確信がないと発言するジウマ氏は無神論者などの発言で、PSDBの連立党関係者も「この時期に口にすべき内容ではない」などと苦言を呈した。
PSDB幹部らは当初「若気の至り」「経験のなさ」などの見方を示して穏便に済まそうとしたが、PT側は、ある事無い事を織り交ぜた中傷で名誉毀損にも当たるとして、最高裁や検察庁に訴えて出たようだ。
PT側が告発する姿勢を見せた事も手伝い、PSDB側は、セーラ氏が「PTと麻薬組織との間には直接的な関係はないが、PTとFarcのつながりは周知の事実」と発言。Farcとの関係指摘は2002年選挙時に同氏がPT攻撃に使った方法でもある。
PT、PSDB両党の応酬は、PTがセーラ氏やPSDB副党首エドゥアウド・ジョージ・C・ペレイラ氏の個人情報を政敵追落しの材料にしようとしたといういわゆるドシエー問題まで遡り、不正な形での個人情報入手は犯罪で、中傷発言などよりもっと深刻な問題だと、PSDB側も避難の手を緩めない。
左翼運動に端を発するPTとFarcの関係表面化は1990年。当時最大勢力を誇っていたFarcは、麻薬組織の用心棒も引受け始め、麻薬売買に手を出す関係者も出ていた。02年選挙ではFarcからPTへの金の動きがあったという情報や、ルーラ政権要職者とFarc幹部の間に通信が取り交わされていたという情報はブラジルメディアでも報道された。
PTとFarcの関係に言及したセーラ氏も最初はインジオ発言のインパクトを和らげようとしたようだが、ドシエー事件に続く非難の応酬に、もっと建設的な選挙戦を望む声が出ている。
当選の暁にはルーラ氏をないがしろにして自分のやりたい事をやるはずなどの批判も浴びたジルマ氏は、セーラ陣営が選挙戦のレベルを貶めたというが、緑の党のマリーナ・シウヴァ氏は、セーラ、ジウマ双方が足の引張り合いをしており、この状況は国のためにはならない、と懸念の声を上げている。