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公立大学の特別枠増える=社会格差など乗越えるため

ニッケイ新聞 2010年7月21日付け

 国立大学入試に国家高等教育試験(Enem)の結果を使うなど受験システム改善も進む中、特別枠導入の公立大学が148校になったと17日エスタード紙が報じた。
 大学入試の特別枠導入は各大学に委ねられており、その対象も、黒人、先住民、キロンボ出身、公立高校出身、障害者、殉職警官子弟、低所得家庭子弟など様々。大学のある地域出身者優先という例もあるようだが、共通しているのは、社会、経済格差を超えて高等教育を受ける事が出来る様配慮した枠である事。
 09年には国民の半数が黒人か黒人系のパルドとなったため、黒人対象枠は公立高校出身などの枠に比べて少ないようだが、公立校教師の再教育用の枠などもある。
 枠の適用方法も様々で、条件毎の受け入れ枠を定員の何%と決めている大学や、対象者には入試でとった点数に何%上乗せというボーナス型採用の大学もある。
 奴隷生活から解放されてからも貧困の中を通った黒人やキロンボ出身者や、低所得家庭で公立校しか行けなかった学生にも高等教育の機会を与える特別枠の拡大を喜ぶ現場の教育者も多い。
 その一方、特別枠を利用した受験生が入学すれば新入生の学力にばらつきが生じ、全体としての教育レベルが下がると懸念する大学関係者がいる事も確かで、このような偏見で見られるのを嫌って、特別枠の適用対象者であっても特別枠申請をしない受験生もいる。
 社会通念や社会的偏見が格差是正の敵との声もあるが、真に喜ぶべきは貧しい家庭の公立校出身者が特別枠適用も無く大学に入学できる事との声が、公私立校の教育システムや社会格差の残るブラジル社会の現実を表してもいる。