ニッケイ新聞 2010年7月22日付け
郷土芸能「しゃんしゃん傘踊り」を通じた鳥取県人会と母県との交流が深まりつつある。先週末サンパウロ市で開催された日本祭りにあわせ、鳥取市から6人の訪問団が来伯。同祭りで本場の踊りを披露するとともに、ブラジルの愛好者への指導を通じて交流を深めた。帰国を前に本紙を訪れた一行は、「ブラジルの人たちと傘でつながっていると感じた」と充実した表情を浮かべた。
鳥取の芸能としてブラジルでも知られる傘踊り。西谷博元会長夫妻らの尽力で29年前から普及が始まり、今ではサンパウロ市のほか第二アリアンサ(ミランドポリス)やアラサツーバ、マリンガ、モジなどでも活動している。普及にあたり、県・市から計800本の傘が寄贈されている。
日本移民百周年の2008年には、皇太子さまが出席されたサンパウロ市式典に200人が出演して踊りを披露。昨年は母県鳥取市で開かれた「第45回鳥取しゃんしゃん祭り」にブラジル県人会から11人が招待を受け参加した。そして今年、初めてとなる鳥取市からの訪問団が実現した。
今回来伯したのは、鳥取市観光協会連の陸谷ヒロ子さん、岡本啓子さん、手皮美津江さん、森下ミツヱさん、米村佐知子さんと、同市企画調整課都市交流係の植田光一さん。
16日に着聖、21日に離伯する多忙な日程。到着後、17日に「第13回フェスティバル・ド・ジャポン(日本祭り)」開会式に参加し、来賓・来場者を前に本場の傘踊りを披露。大きな拍手を浴びた。
「これほど大きな祭りだとは思わなかった」と話す訪問団長の陸谷さんは、「温かい歓声をいただき、ブラジルの人たちと一緒に踊って傘でつながっていることを感じた」と振り返る。
滞在中は県人会やサンミゲル・パウリスタなどで、ブラジルの愛好者への指導も実施。19日には県人会館で、今年の春の叙勲で旭日双光章を受けた西谷元会長の祝賀会とあわせ、訪問団の歓迎交流会も開かれた。
「皆さん一生懸命で、上手。鳥取ではもうやっていない初期の振り付けも残っていて、負けてはいられないと思いました」と陸谷さん。「皆さん初めて会った気がしない」(森下さん)、「日本にいると思うほど。感激しました」(手皮さん)、「ブラジルの皆さんは元気。私たちも頑張らないと」(岡本さん)、「高齢の方も健康のためと踊っているのに感心した」(米村さん)など、一人ひとりがブラジル訪問の驚きと感動を振り返った。
同行した植田さんによれば、出発前、竹内功鳥取市長は県人会創立のきっかけが52年の鳥取大火への寄付だったことにも触れ、今後の普及・交流に意欲を見せたという。「(ブラジルの傘踊りを)直接見て驚いた」という植田さんは、「ブラジルと鳥取が傘でつながる仕組みを考えたい」と話した。
本橋幹久県人会長は、「昨年11人が招待を受け、今年は市からの訪問が実現した。これでスタートが切れたと思う」とさらなる交流に期待を表した。