ニッケイ新聞 2010年7月23日付け
ブラジル経済の潮目が変わった――。21日晩、中銀の通貨政策委員会(Copom)は、予想されていた0・75%ではなくて0・50%の利上げしかせず、基本金利(Selic)を10・75%と決定したことで、国内経済が大きな転換期に入ったことを示唆したと22日付け伯字各紙が報じている。4月と6月に行われた同委員会では、ともに景気拡大によるインフレ加熱を抑えるために0・75%上げられ、年末には11・75%まで上昇するのが規定路線だった。今回の中銀の慎重な判断は各界に影響を及ぼしそうだ。
中銀は政府から独立した存在との建て前だが、実際は政府の影響を強く受けているといわれてきた。ルーラ大統領は先日、ブラジル経済の成長は0・75%利上げによって約束されるとの発言をして暗に圧力をかけ、多くの経済専門家はその通りになるだろうと予測していた。
ところが、21日の同委員会では全会一致で0・50%と決定された。理由は、ここ数週間に発表されたいくつかの経済指標で、経済減速傾向が顕著になったことだという。
エスタード紙(B6)には次のような分析がある。経済浮揚策としてなんども延期しながら続けてきたIPI(工業税)減税策が終わったことで、それまで消費意欲を先取りする形で売上げ拡大をしてきたために、終了後には逆に購買意欲に大きくブレーキがかかった状態になっている。
その他、W杯開催期間中のブラジル代表の試合時間にはあらゆる事務所や商店が閉鎖され、経済活動の時間が短かった点が指摘される。さらにIPCA15(15種類の基本的食料品の物価指標)がこの5年間で最大の低下をしめしたことなどで、インフレの危険性が減ると同時に、経済減速の可能性が論じられるようになった。
加えて国際環境においても、金融危機発生以来、世界の経済成長を牽引してきた中国経済に、不動産バブル形成の疑念が取りざたされるようになり、米国経済にも大きな好転はみられず、欧州共同体もギリシア発の経済不安が続いており、「ここ数週間、世界的経済危機の二番底がくるのではというテーマが国際経済筋の中心の話題だった」(同紙)という。
今後の新展開に対応した議論が次回の同委員会(8月31日~9月1日)で行われる。同紙の経済評論家のセルソ・ミンギは、「なにも前途に間違いがなければ、8月には0・25%利上げにとどまり、そのまま年末まで維持される可能性がある」と論じている。