ニッケイ新聞 2010年7月24日付け
アメリカ史上最悪の環境汚染と言われる、今年4月に米国ルイジアナ州のメキシコ湾沖合で発生した英BP石油プラットフォームの爆発による原油流出事故で、アメリカを始め各国では環境法を重視して油田開発での規制を強化している。ブラジルでも、今年2千億ドルを投資しての大型事業も計画していた国営石油会社ペトロブラスに影響が懸念されている。
英国経済紙フィナンシャル・タイムズでは、ペトロブラス事業は今年の同業界の事業でも2番目に大きな打撃を受けるものになるだろうと推測している。
2003年に交わされたエネルギー協定のもと、伯政府では原油流出事故の原因を把握しようと、20日同事故に関する詳細な調査結果を米政府に要請したと21日付エスタード紙が報じた。
ワシントンで行われた米国エネルギー省のスティーブン・チュー局長との懇談の中で、鉱山エネルギー省のマルシオ・ジメルマン大臣が原油流出事故に関する詳細な調査報告を要請。ジルメマン大臣は「石油開発の将来を担う上で、我々も何が起きたのか正確に把握しておかなければならない」と述べている。
原油流出事故は、上院で油田開発の関連法案を採決する数週間前に発生。ペトロブラスは2千億ドルの予算で、2010から14年にかけて深さ5~7千メートルのプレソルト(岩塩層下)の油田開発を行う計画を提出していたが、国家原油庁(ANP)は同事故を受けて計画の再検討を行うとして、今月に予定していた同事業への資本調達を9月へと延期した。
また、ANPが石油採掘に関する安全面での規制強化を図っていることで、ペトロブラスは原油流出防止装置の改良や技術開発に重点的な投資を迫られることになり、事業の延滞、操業コストの増加、事故の影響による保険料の値上げといった障害に直面することになる。
英紙フィナンシャル・タイムズによれば、今回事故が発生したBPの石油プラットフォームの事業よりも、ペトロブラスの岩塩層下油田採掘事業の方が、技術的困難が大きいと指摘している。例えば、BPの場合よりも水深が深く、より沖合にある場所で採掘されるために、安全対策面でより高度な技術が必要となり採掘コストが上がるとしている。