ニッケイ新聞 2010年7月29日付け
イランのウラン濃縮問題をめぐり、欧州同盟(EU)諸国が26日にエネルギー部門の新たな制裁を決めた事で、再び交渉の場につく事を承認したイランが27日、交渉の場にはブラジルとトルコも同席する事を求めたと28日付エスタード紙が報じた。
ルーラ大統領がイランを訪問し、同国保有の低濃縮ウランを国外に搬出し、再濃縮後に同国に返還する事に合意する内容の伯、土、イ3カ国合意文書に調印したのは5月17日の事だった。
ところが、ルーラ大統領らがこれで国際社会も納得と思った矢先にイラン側が国内でのウラン濃縮継続発言、これにより合意内容そのものへの国際的な不信がつのり、国連安全保障理事会で新たな経済制裁採択に至ったのが6月9日だ。
イラン側は制裁決議後に見せていた対話を拒む姿勢は緩めたものの、事ある毎に弁を翻し、なかなか交渉の場に着こうとしない。これに業を煮やした米国やEUが採った手段が、より強力な制裁採択だった。
実際には、イラン側はEU決議直前の25日にブラジル、トルコとも会談を行い、ラマダンが終る9月初旬以降に欧米諸国との再交渉に応じると発表し、国際原子力機関(IAEA)にも文書を送付するとしていたのだが、EU側はそれでは満足せず、ガス、石油といったエネルギー部門に投資する事や、技術移転、技術面のサポートなどを全面的に禁じたのが26日のEU制裁決議だ。
これに対し、イラン側は同26日にIAEAへの文書で再交渉に応じる事を明言。この時点では再交渉には条件をつけないとしていたが、EU側が交渉には米、英、仏、露、独、中6カ国参加が必須との条件を出した事で、27日にブラジルとトルコも同席する事を認めるよう要請して来た。
6月の制裁決議後も、国際社会を挑発するかのようにウラン濃縮を継続し、7月11日には20%濃縮ウラン20キロ生産に成功と発表までしていたイランが、本当に交渉の場につくのか、国内でのウラン濃縮を本当に放棄するのかなど、豹変する同国のあり方に対する不信感は根強い。
欧米諸国の中では、ブラジルとトルコの交渉同席要請は、自国に対し友好的なブラジルとトルコも交渉の場に同席する事で、国政社会の風当たりを弱め、時間稼ぎをするつもりとの見方が一般的。今月12日には、米、露、仏3国が、イランとの交渉再開の場合もブラジルやトルコが交渉参加する事を拒否する姿勢も見せていただけに、イラン側の要請を国際社会が受け入れるか否かは疑問だ。
交渉にあたっては6強以外の国の参加を求めると共に、参加国には、イランとの友好的関係を望むか否かの意思表示や、イスラエルの核兵器製造に対する意見公開を求めるなどの態度には、イラン側の不安も見え隠れしているようだ。