ニッケイ新聞 2010年7月31日付け
ベネズエラ国内のコロンビア革命軍(Farc)兵士らの存在を巡るコロンビア側発言で、ベネズエラとコロンビア二国間の緊張が再び高まった事に対し、ルーラ大統領が「個人レベルの言葉の問題」と発言した事を受け、コロンビアのウリベ大統領が「Farcがもたらす問題の重要性を理解してない」と嘆く公式文書を発表したと30日付伯字紙が報じた。
Farcを巡る2国間の緊張は、04年にゲリラの対外交渉担当者がベネスエラ国内でコロンビアの諜報関係者らによって拉致されて以来繰返されているもの。今回は、ウリベ大統領が15日に米州機構(OAS)にベネズエラ国内にFarc関係者がいる事を示す写真やビデオを提出した事で、チャベス大統領が16日に、コロンビア駐在大使召還を決めた。
両国間の緊張はその後も高まり、22日にはベネズエラが、同国駐在のコロンビア大使らに72時間以内の退去命令を出し実質的な国交断絶状態で、国境付近の兵も増強されている。
両国が再び紛争状態に入った事に対しては南米同盟(ウナスール)も調停を試みているが、29日の外相会議では合意に至らず、8月2、3日に開催される首脳会談の議題に上るのは必至だ。
8月7日に政権交代が行われるコロンビアだけに、ウリベ大統領がこの時期にFarc問題を取り上げた事をいぶかるルーラ大統領は28日、両国間の調停役を務める事はやぶさかではないとした上「字義通りの紛争が起きたわけではなく、言葉のあやとも言うべきレベルの出来事」との見解を示した。
これに対し、ルーラ大統領は、ベネズエラにFarcなどのゲリラ勢力が存在する事がコロンビアや南米大陸にとってドレほど大きな脅威となるかを認識していないとしたのが、ウリベ大統領の公式文書だ。
Farcなどの左翼ゲリラや麻薬組織との抗争に多大なエネルギーを費やしてきたコロンビアにとり、国境付近に追いやられたゲリラ達が他国に入り込んでその勢力を拡大し、同国や南米諸国に対する影響力を保持、拡大する事は何としても避けたい事態で、04年のベネズエラでの拉致事件以降も、08年のエクアドルのFarc基地爆撃で両国間の紛争寸前の事態を招いた事もある。
ブラジルでも今年5月にアマゾナス州マナウスでゲリラの基地が摘発されるなど、Farcの影響は決して小さくないが、ウリベ大統領の文書に対して直接の言及を避けたルーラ大統領は、30日にコロンビアの次期大統領となるフアン・マヌエウ・サントス氏と電話会談し、同国の政権交代後には2国間の関係修復の感触を得た様だ。
南米同盟事務局長に就任するアルゼンチンのネストル・キルチネル元大統領も、5日にはチャベス大統領、6日にはウリベ大統領と会談し、関係修復にむけた調停役を務める事になりそうだ。