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頭痛の種がエネルギー源に=家庭ゴミ焼却で地域発電=ガス爆発や土砂崩れも解消=回収法案と共に期待集まる

ニッケイ新聞 2010年8月6日付け

 大サンパウロ市圏のサンベルナルド・ド・カンポに家庭ゴミ焼却による発電施設が作られる事になり、地域への電力供給と共に、ガス爆発や土砂崩れの問題も解消される見込みだと5日付エスタード紙が報じた。家庭ゴミ焼却による発電施設建設はブラジル初で、2日に大統領裁可となったゴミ回収法と共に、ゴミ処理問題に新しい方向性を与えるものとなりそうだ。

 7月9日付エスタード紙によると、ブラジル全土で毎日出るゴミは17万トンに上り、そのうちの40%はリッションとかアテーロと呼ばれるゴミ捨て場に持ち込まれる。
 どんなゴミでも無処理のまま捨てるリッションは環境保護政策が見直された1981年に禁じられたものだが、実際には化学薬品なども混じったゴミが都市近郊にあるゴミ捨て場に捨てられ、ゴミ捨て場が飽和状態となる、土壌汚染などを引起こす、不法投棄のゴミが絶えない、などの問題が続いている。
 一方、2日に裁可されたゴミ回収法は、電子機器や電池などの電子ゴミや清掃用品や食料品包装に使われるプラスチックや缶などの再生資源ごみなどを、製造業者や販売店、消費者が互いに協力して回収するというもので、再生利用を促進すると共に、環境破壊を防ぐ事が目的とされる。
 ただ、再生資源ゴミとはならない生ゴミなどをどの様に処理するかはどの自治体にとっても頭痛の種で、分別回収の不備と共に、同種のゴミを捨てるアテーロの場所確保が年毎に困難になってきているのが実情だ。
 そこで注目されるのが今回の様な焼却施設を兼ねた発電所だ。サンベルナルド・ド・カンポで計画している施設は、1日1千トンのゴミ処理能力を持ち、1時間当たり30メガワットの発電が可能。同発電所では、人口30万人の町で消費するのに充分な電力を供給できるという。
 ゴミを利用した発電施設そのものはサンパウロ市にも2カ所あるが、これは、ゴミから発生するメタンガスを利用するもの。ゴミ焼却による発電施設としては、病院からのゴミや工場廃棄物利用の施設があるものの、一般家庭ゴミ焼却による発電施設は全伯でも初めてだ。
 今回の施設では、回収されたゴミを分別後、再利用できないゴミのみを焼却。再利用できるものは種類毎に再処理施設に回される。
 建設予定地のアウヴァレンガは昔のリッションで、ゴミから発生する汚水による土壌・水質汚染やメタンガス爆発事故が起きる可能性もある場所の一つ。リオ州ニテロイにあったリッションのブンバの丘で今年4月に起きた土砂崩れとガス爆発は記憶に新しいが、2億2千万レアルをかけ、2012年から発電開始予定のプロジェクトでは、危険地域に住む住民200家族を移転させた後に汚水やガス抜き処理を行い、その後に施設建設、稼動となるという。