ニッケイ新聞 2010年8月7日付け
リオの歴史町パラチで4日から8日まで国際文学祭が開催されている。著名な作家や歴史学者も参加する同祭だが、今年は20世紀のブラジルの代表的作家ジルベルト・フレイレ(1900―1987)の世界を分析するなど、テーマ毎に議論を交わし文学界を展望する。4、6日付エスタード紙が取り上げた。
ブラジルで最も重要視され、第8回を迎える同文学祭では昨年までに過去240人の作家が招待されており、06~09年にかけては6万7千人の聴衆を動員するなど、一般の注目をも集めているようだ。
フェルナンド・エンリケ・カルドーゾ元大統領も出席する同祭では、31カ国から集まった作家たちが各分野について議論を交わすが、その中では故ジルベルト・フレイレに関する分析も行われている。
フレイレはペルナンブーコ出身で社会学者、文化人類学者、歴史学者、政治家と多方面で活躍した文化人。代表作は「大邸宅と奴隷小屋(Casa-Grande & Senzala)」で、植民地時代における大農園での家父長制下の社会と生活を描いている。世界各国の言葉に翻訳されて、西洋思想の古典として高い評価を受ける。
ロマンス主義者の作家モアシル・スクリアル氏は、フレイレは一般書をも執筆しながら人間学、社会科学の両側面から文学を訴えたとしながら、「両面の線引きが曖昧になっている。道徳観を与えながら、それを一般化している節がある」と分析。
歴史学者のリカルド・ベンザケン氏は「フレイレの口調には16世紀の随筆への類似がみられる」と指摘し、「執筆の中で自身の考えを全て書ききっていないのは、書き伝えることだけでなく対話の価値を重視していたからではないか」と見解した。
また、同祭の中では、フレイレの旧友であり作家でもあるエジソン・ネリー・ダ・フォンセッカ氏がフレイレの生涯について語る場面もあり、聴衆の興味を引きつけたようだ。
一方、2日に発表されたサンパウロ文学賞では、フレイレと同じくペルナンブーコ州出身のライムンド・カレイロ氏の「A Minha Alma E Irma de Deus」が09年度最優秀作品に選ばれ、リオ出身エジネイ・シルヴェストレ氏の「Se Eu Fechar Os Olhos Agora」が09年度最優秀ロマンス小説に選ばれている。