ニッケイ新聞 2010年8月12日付け
【既報関連】7月22日から国交断絶状態であったコロンビアとベネズエラが、10日のコロンビア北部サンタマルタでの首脳会談後、国交回復を宣言したと11日付伯字紙が報じた。アンデス5カ国のスペインからの独立を指揮した「解放者」シモン・ボリバルの死地での会談が、ベ・コ両国関係の新しいページを開く事となった。
1830年に解放者ボリバルが死去したサンタマルタ近郊のサン・ペドロ・アレハンドリーノ農場でのベ・コ首脳会談は4時間余りに及んだ。
会談に先立って現地入りしたコロンビアのサントス大統領は「国民の益となる様、あらゆる手段を尽くして解決を図りたい」と発言。一方、ベネズエラのチャベス大統領は、丁度59歳となったサントス大統領にボリバルの伝記を贈り、「コロンビアを如何に愛しているかを示すために来たのであり、両国間に平和を築きたいと願っている」として会談に臨んだ。
両国関係の悪化はベネズエラ領内でのコロンビア革命軍(Farc)幹部拉致事件がきっかけ。08年のエクアドル領内のFarc基地爆破事件以降は、ベネズエラとエクアドル両国の反コロンビア感情が強まり、南米同盟(ウナスル)でのコロンビアの孤立化も招いていた。
ところが、会談後の会見では、チャベス大統領が「ボリバルを新しくされた両国関係の礎石とする」とし、「ベネズエラ政府はゲリラやテロリスト、麻薬組織の存在を、許しもしなければ支援もしない」と宣言。
これに対し、サントス大統領も、会談は「両国国民の利益最優先」という点で一致し、「チャベス大統領が武装勢力の存在を許さないと約束した事は、緊密で強固な両国関係が築かれるための重要な一歩」と評価した。
この会談により、ウリベ前コロンビア大統領がベ国領内にはFarc基地があり、兵士も約1500人いると指摘した事に起因する両国間の国交断絶は、3週間足らずで解決した事になる。
Farc問題に関しては、両国外相やウナスル事務局長のネストル・キルチネル前アルゼンチン大統領らからなる委員会を立上げ、ベネズエラ領内への同組織侵入や拡大防止策を検討する事も決まった。
09年の米コ軍事同盟更新に強硬に反対し、この7月には国境地帯の武力配備も強化したチャベス大統領が、新大統領が両国間の良好な関係構築の意思を表明した事がコロンビア軍や米軍の侵攻はない事の保証となると発言するなど、ベ・コ両国首脳会談がもたらした変化は大きいようだ。
両国の良好な関係がいつまで続くかを危ぶむ声もあるが、エスタード紙には、米州機構の役割縮小とウナスルの役割拡大が確認されたベ・コ両国の国交回復は、南米大陸にとっても新しい時代の幕開けを意味するとの見方も掲載されている。