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知る権利と知らせる義務=大統領選候補も来て発言=「報道の自由」の確保約す=リオの全国新聞協会会議で

ニッケイ新聞 2010年8月21日付け

 リオ市では19、20日の2日間、全国新聞協会(ANJ)主催の第8回ブラジル新聞会議が開催され、大統領選候補らも報道の自由を尊重することに言及した「チャプルテペック宣言」に署名する一方、報道の自由に関する各自の考えを訴えたと、19、20日付エスタード紙が報じた。

 「チャプルテペック宣言」は、1994年にメキシコで開催された米州新聞協会主催の「表現の自由に関する米州会議」において54カ国代表により署名された宣言で、ブラジルでも民主社会党(PSDB)のカルドーゾ大統領が1996年に、労働者党(PT)ルーラ大統領が2003年に各々署名しているものだ。
 同宣言への署名は、報道の自由を尊重する事を宣言する事でもあるが、今回の新聞会議では、任職を受けた大統領ではなく、大統領選の候補者にも署名を求めた事が注目される。
 ブラジルでの報道の自由を考える場合、ジョゼ・サルネイ上院議長の息子で企業家のフェルナンド・サルネイ氏がらみの事件を報道したため、2009年7月31日に同事件に関する報道規制を受けたエスタード紙が、フェルナンド氏が告訴を取下げてからも連日、報道規制何日目と訴えている事が頭に浮かぶが、隣国ベネズエラやアルゼンチンでは報道機関への政府介入も何度か起きている。
 報道の自由に関しては世界的な比較もあり、今年5月発表のランキングでのブラジルは175カ国中71位。欧米諸国の多くで自由が保障されているのに対し、ブラジルやアルゼンチンなどは部分的な制限ありの範疇に入る。
 ブラジルで制限され易いのは、麻薬取引や汚職、環境破壊の問題との指摘もあるが、今回の新聞会議に参加したPSDBの大統領候補ジョゼ・セーラ氏は、報道や言論の自由は民主主義の根幹部分と主張した上、ここ数年、連邦政府やPTは報道の自由を脅かし、情報操作や報道内容の検閲を行ってきたと批判した。
 PTの大統領候補ジウマ・ロウセフ氏が署名した上で選挙裁判所に提出した最初の施政方針の中には報道規制につながる記述があり、その後に差し替えた事を知ったセーラ氏が、「信じ難い事をしたものだ」と評した事は7月8日付フォーリャ紙などにも報じられており、今回の発言もこれら一連の出来事を念頭に置いたものだ。
 これに対しジウマ氏は19日、「自分は軍政時代に投獄された経験もあり、言論の自由の大切さを知っている」とした上で、セーラ氏の批判は的違いと反論した。緑の党のマリーナ氏は20日に同会議に参加した。
 国民には知る権利、報道機関には知らせる義務があるが、現実には当面伏せる必要があるなど、状況に応じた判断が入る事もあり得る。今回の会議の主題は電子情報化と新聞についてだが、事実誤認を避け、正しい情報を伝える責任はいつの時代も変わらない。