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益々膨らむ経常収支赤字=7月だけで45億ドルも=外国旅行や個人輸入増加=工業の投資低調が気がかり

ニッケイ新聞 2010年8月25日付け

 昨年来の経常収支赤字傾向は7月も続き、7月の赤字額は45億ドル。今年に入ってからの累積では昨年同期の3倍にあたる282億6千万ドルの赤字となり、どちらも中央銀行が統計をとり始めた1947年以降最悪と24日付伯字紙が報じた。

 7月の経常収支赤字拡大要因の一つは、休暇を利用した外国旅行者が増えた上、所得増とレアル高による為替安感が外国旅行者の国外支出や個人輸入などに拍車をかけた事だという。
 ブラジルから米国への旅行者の38%が利用するニューヨークJFケネディ空港では、TAM社チェックインカウンターや免税申告窓口に並ぶ人の大半はブラジル人ともいわれる程。外国旅行者と国外からの旅行者の支出差額は10億980万ドルに達し、60億ドルを記録したサービス・所得収支赤字に占める比率が大きくなった。
 ブラジルの経常収支赤字拡大は、回復軌道に乗ったブラジル経済と回復が遅れている国々の経済状況の差を反映しているともいえ、7月までの外国旅行者支出額が56・1%増の85億8千万ドルを記録したのに対し、国外からの旅行者の国内支出は12・2%増の33億8千万ドルに止まった。
 同様の動きは、国外で働く人々がブラジルに向けて送金した額と国内で働く外国人が国外に送金する額との差にも表れる。昨年同期比1・3%増の13億ドルだったブラジル向け送金に対し、国外送金は38・1%増の4億5230万ドルに及んだ。
 国外への送金増という意味では、ブラジルに進出している企業の利益送金などもその一つだが、利益送金増の一方、伸び悩んでいるのが生産活動などのためにつぎ込まれる外国直接投資だ。
 7月の外国直接投資黒字は26億4千万ドルで、経常収支赤字の58%をカバーしたのみ。7月までの累積黒字も147億ドルで、中銀が予想していた380億ドルには到底届きそうもない状況だ。
 このため、経常収支赤字補填に期待がかかるのが、国外からの資本投資や国外進出企業が国外で行う貸付融資。国外進出企業が社屋や工場建設のために受ける融資や、ブラジル企業への資本投資や株買い付けで流れ込むドルにより、ドル入超状態は維持されている。
 一方、コモディティ輸出が伸びている筈の貿易部門の7月実績は、輸出の17億7千万ドルに対し、輸入が16億3千万ドルで、黒字は僅か14億ドル。黒字伸び悩みの一因となっているのが、工業用機器や加工材料などの輸入増だ。
 加工業部門の貿易赤字累積は340億ドルに及び、工業界の開発投資が十分とは言えず、その需要も輸入で埋める状況を懸念する専門家は、国内総生産(GDP)が6%の伸びを示してもハイテク産業を中心とした工業部門の成長は1%強とみている。