ニッケイ新聞 2010年8月28日付け
廉価で質の良い医療を受けられるとして、加療目的で来伯する外国人旅行者が増えており、サンパウロ市で開催中の国際観光に関するイベントでは、外国人向けの医療についての新たな基準も公表されると27日付伯字紙が報じた。2007年だけで120万人が訪れるタイには到底及ばないが、07~09年に加療目的で来伯した外国人旅行者は18万人に上るという。
最近ではパラグアイのフェルナンド・ルゴ大統領がガン治療のためにサンパウロ市のシリオ・リバネス病院に入院した例など、国外からの患者を対象とした医療行為は年々増えており、サンパウロ市内の5病院では、外国人向け医療だけで年間約600億ドルが動いている。
外国人向け医療も行いG5と称されているのは、シリオ・リバネス、アルベルト・アインシュタイン、オズワルド・クルス、サマリターノ、心臓病院(HCor)の5病院。全てが旅行保険適用も受けられる国際規格適合病院で、中南米やアフリカ中心に、カナダ、アメリカ、ドイツ、アンゴラなど、多国籍の人々に対応している。
加療目的で来伯する人々の多くはサンパウロ市で治療を受けており、以下、リオ市、サルバドール市、レシフェ市と続く。サンパウロ市の場合、外国人旅行者の18%は加療目的だ。
加療目的の外国人旅行者の増加は、居住地そのものより廉価で治療が受けられる、医療水準がより高いなどが原因だが、これらの外国人旅行者がブラジル内で費やすのは医療費1ドルに対しレジャー8ドルともいわれ、受け入れ側の病院も、2カ国語以上話せる医療スタッフの他、ホテルやチケットの手配、患者に同伴して来る人向けの観光スケジュールの設定などを手がけるスタッフを用意して対応している。
国外からの患者は、美容整形も含む形成手術や肥満手術を目的とする人の他、皮膚科や心臓科、眼科、ガン(悪性腫瘍)科、人工授精などの専門科受診者も多いという。
サンパウロ市の統計では加療目的の外国人旅行者の国内滞在期間は平均3日。現場関係者が懸念する事の一つは手術前後の連絡やケアの不足で、医師と患者が手術室で初対面となる事も多い現状では、薬へのアレルギーなど、事前検査で避けうる問題が発生する可能性も高まる上、術後の患者の移動や帰国後の処置に対する不安も残る。
これらの問題解決のため、27日に公表される医師や病院、観光業者達が共同で作成した外国人向け医療新基準では、手術目的での来伯者への国内での検査義務化の他、検査などで滞在延長となる分の諸経費や帰国費用は健康保険で負担する事の合意、医療従事者と患者との間には仲介者を挟まない、外国人への臓器移植や外国人の統一医療保健システム(SUS)利用は認めない事などを明記する予定だという。