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サンパウロ州議候補名乗り囮作戦=ファヴェーラで25人逮捕

ニッケイ新聞 2010年9月1日付け

 サンパウロ市はおろか国内でも有数規模のエリオポリスのファヴェーラで、サンパウロ州議員立候補者との触れ込みで入り込んだ警官が麻薬密売者らの実態を捜査し、25人を逮捕という映画まがいの捕り物劇が起きた。
 8月28日付フォーリャ紙によると、囮(おとり)捜査の警官は、PLMのコスメ・ダ・ヴィラ、候補者番号70171の触れ込みで約60日間住民に密着。宣伝カーの前に立ち、支援者役の警官と共にファヴェーラ内を回りながら、麻薬取引の拠点などを写真やビデオで撮影した捜査官らは、情報収集を終えた27日、日暮れを待ってその仮面を脱ぎ捨てた。
 名前入りのシャツやポスターなどを取り揃え、約100万平方メートルのファヴェーラ内を回りつつ、宣伝カー備付けのカメラなどで大麻やコカイン、クラッキの流入・販売ルートや関係者の情報を集めた捜査官達は、小銃などの重火器を手に現場を警備する様子などもつぶさに観察した。
 市警や軍警がパトカーなどで乗り込んでも12万5千人の住民からは警戒されるだけだが、山ほどの公約と共に宣伝カーで回る捜査官達に対しては、実在しない政党名や候補者番号に疑問を抱く者さえなく、素顔を現すその時まで、彼らの素性を問いただした住民もいなかったというから、本職はだしの囮捜査だったといえよう。
 一方、本当に選挙活動中の候補者にとってファヴェーラ住民の支持取付けが大切である事は、8月31日付エスタード紙の「サンパウロ市のファヴェーラは選挙戦戦場と化した」との記事でも明らか。8月25日にはルーラ大統領夫人がエリオポリスとパライゾポリスの両ファヴェーラを訪問した直後でもあり、多くの約束と住民を恐れぬ姿で好意を得る方法は、選挙戦の最中ならではの作戦だ。